【体験型観光が日本を変える26】田舎を訪ね、田舎に学べ 藤澤安良


 新緑が目映く、過ごしやすいさわやかな季節となった。季節とは裏腹に、政界では大臣や政務官などの不祥事や暴言が続いている。“気の緩み”と与党からも自制が求められている。おごりもあるだろうと思われる。公人や国民の代表であるという自覚が足りない。口先では「国民のため」と言うが、住民を本当に見ているのか疑わしく自己保身の本性が見えてしまう。

 これは、国政にとどまらず地方自治体も同様に首長や議員にもそういう人物をあまた見てきた。地方創生や地域活性化が進まない大きな理由でもある。国民の血税である補助金や交付金を食ってしまうだけの事業であってはならない。あくまでも未来を拓く礎となるような成果につながる事業にしなければならない。観光振興や交流人口の拡大も、「農泊」や「渚泊」の推進も、その行動によって大きく結果が違ってくる。

 新年度に入ってからも、体験型観光振興や農山漁村生活体験(民家ステイ型の農泊や渚泊)の推進、安全対策、危機管理についての研修セミナーの講師で各地に伺っている。首長や行政職員がもっと一生懸命だったらうまくいくのにと思うことが多い。この上は、行政力は当然ながら住民力に期待がかかる。しかしながら、本当にうまく進むのは官民一体となった取り組みであることは言うまでもない。

 人口が増加したのは、首都圏4都県、愛知県、福岡県、沖縄県の7都県だけで、減少が著しいのは東北や中四国などで大都市圏と地方の人口格差は大きい。それと同時に、所得や生活の仕方も、選挙の区割りにも大きな格差となっている。

 日本を理解するには、食生産の現場であり、水や酸素を供給してくれる田舎の真実と価値を知ることである。外国人旅行者が増え続けているが、訪日リピーターの多くが田舎を目指す現象が起きている。日本の都市住民こそが、知らないでは済まされない田舎の現状、魅力について訪問して学ぶべきである。

 農家に生まれた私は、小学生から田植えの手伝いが義務付けられていた。中高生になると、耕運機や脱穀機での仕事は手伝いではなく、本業のようにやっていた。今、トラクターや田植機に乗っているのは高齢者ばかりで、中高生を見かけることはない。

 都市のマンションに住む人は土に触れる機会すらない。田植えや野菜・果樹栽培など農作業に関わることは人生経験として必要である。農作業と言っても高度で熟練した技術が必要な仕事ばかりではない。私自身が子ども時代にとても役に立っていたように手伝えることは必ずある。しっかり教えることである。

 修学旅行生の田舎体験では、農作物もその名前すらも知らない生徒がいる。ましてや栽培の仕方、おいしい調理の仕方も、食べ方も知らない。民家ステイで夕食の時に「自分の家では、こんなにおいしい温かい食事を食べたことがない」と言って泣き出した生徒がいたという。心の豊かさは物や金ではないことの証しである。

 
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