3月に5日間ほど滞在して、佐賀県観光連盟の事業であるバリアフリーモニターツアーに参加しました。
佐賀県観光連盟は2016年度にバリアフリー事業に関する予算を組み、昨年4月からは佐賀嬉野バリアフリーツアーセンターと協力し、依頼があった佐賀県内18軒の宿泊施設へのバリアフリー調査が行われ、どう改善したらよいかアドバイスをしました。それを基に申請のあった12軒に対して、シャワーチェアー購入、お風呂や階段の手すりの設置等にかかった経費の半額を最大50万円まで負担する補助金が出ました。その改善した宿泊施設を主に車椅子を使用しているモニター等が宿泊し、現場をチェックしてもらうという、モニター数230名という大がかりなツアーでした。2017年度も今回行われたモニターツアーでの検証を基に、さらに有効なバリアフリー化へのアドバイスにつなげていかれ、引き続き宿泊施設への補助事業も継続されます。
行政における「バリアフリー」は、一般的には地元の高齢者に対応する地域福祉課が窓口になることが多いのですが、ユニバーサルツーリズムに関しては、福祉であると同時に観光もあります。その点、佐賀県は観光連盟の事業として捉えるところが、全国でも先進的な取り組みと言え、このような進め方がより広がってほしいと思います。
さて、旅館におけるバリアフリー温泉ですが、既に取り組まれている方のお気持ちはそれぞれです。明確な指標が記されてないので、親の介護体験やお客さんからのリクエストに応えながら試行錯誤しているのが現状。ただ、バリアフリールームの稼働率はとても高く、「うちの旅館の稼ぎ柱だよ」とおっしゃるオーナーに何人も会いました。
バリアフリールームを使うのは、3世代、4世代の家族旅行が多いと聞きます。日頃、施設に入っているお爺ちゃんお婆ちゃんと一緒に孫の入学祝いをするというお客さんが増えているそうです。
佐賀県嬉野温泉では、2人の入浴介助がついて5千円というサービスを実施しています。問い合わせは2016年で倍増。「昨日も、娘2人、息子1人で体がご不自由なお父さんを連れてこられました。子供たちが大満足でした。最近は以前に増して、機能障害が重度のお客さんが増えました」と、入浴介助をするヘルパーさんが話していました。
バリアフリー温泉について語る時は、皆さん、優しい表情をされます。もちろん商売をされているわけですから、善意だけで成り立つものではありません。けれど、ふっと、表情が変わるのです。目に優しさがこぼれる。
こうした気持ちが根幹にある人の言葉を私は伝えていかなければと、この取材のたびに考えさせられます。
(温泉エッセイスト)