茨城県では現在、五浦六角堂のある茨城県北茨城市を中心に、六角堂を設計し、日本の美術教育に力を注いだ岡倉天心の姿を描いた映画「天心」の制作に向けた動きが進んでいる。東日本大震災の津波で流失した六角堂が再建されるなど、映画撮影のための舞台も整いつつある。地元と一体となった映画づくりにより地域を盛り上げ、東日本大震災からの復興機運の向上につなげたい考えだ。
天心は、茨城県ゆかりの題材を取り上げ、ロケを行う茨城発の映画の第3弾として、「HAZAN」、「桜田門外ノ変」に続き3年ほど前から計画。岡倉天心の生誕150年、没後100年となる2013年の公開を目指している。
映画の舞台となる北茨城市は、震災による被害のほか、原発事故により観光産業や水産業などが大きな打撃を受けている。そのため五浦から日本美術院の再興を目指した天心らの姿に震災被害からの復興を目指す茨城を重ね合わせ、「ここから始まる」をテーマに掲げて映画を制作することで、震災からの復興や地元の元気発信を図ることとなった。
映画制作を盛り上げようと行政や大学、地元企業などでつくる同映画の実行委員会では、北茨城市出身のミュージシャン、石井竜也さんがデザインしたPRロゴマークも制定。購入代金の一部が映画の製作費用となる、ロゴをあしらったオフィシャル缶バッチを作成し、販売を始めた。また協賛を1口1万円で募っている。
天心には同県水戸市出身の俳優、渡辺裕之さんの出演が決定。またすでに六角堂の創建のシーンとして、茨城大学の協力を受けて4月に六角堂の再建の様子を先行撮影している。今後は夏をめどに、北茨城はじめ県内5カ所でエキストラのオーディションを実施すると同時に、自治体と共にプロモーション活動などを進める予定だ。
星加正紀プロデューサーは、「震災からの復興途中で地元の皆さんも厳しい時だが、茨城の皆さんは地域発の映画づくりに非常に協力的で、大変ありがたい。茨城を、日本を元気づけられる復興支援映画を実現したい」と話し、映画製作への理解と協力を求めた。
映画のPRロゴ
天心展が開幕 東京の百貨店で
東日本大震災の津波で流失した茨城県北茨城市の五浦六角堂の再建を記念した展覧会「五浦と岡倉天心の遺産展」が9日、東京都中央区の日本橋髙島屋で始まった=写真。茨城大学などでつくる実行委員会、日本経済新聞社の主催。今月28日まで。
日本画というジャンルを確立した岡倉天心の軌跡、五浦六角堂の再建について写真や絵画、文書で紹介し、文化財の保護の重要性や震災からの復興をアピールする。天心の指導のもと、新しい日本画の創造に取り組んだ横山大観をはじめとする画家たちの作品も展示している。