政府が今国会に提出した「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律案」が、16日の衆院本会議で賛成多数で可決され、参院に送付された。通訳案内士の業務独占規制を廃止し、誰でも有償でガイドができるように改正。旅行業法では、ランドオペレーター(旅行サービス手配業)に登録制を創設するほか、着地型旅行の造成、販売を促すため規制を緩和する。今国会で成立の見通しだ。
通訳案内士法と旅行業法の改正法案は、通訳案内士と旅行業者、ランドオペレーターの関連などから併せて国会に提出された。衆院国土交通委員会では、10日の提案理由の聴取に続き、12日に審議を行い、賛成多数で可決していた。
通訳案内士法の改正法案では、有資格の通訳案内士が「全国通訳案内士」「地域通訳案内士」などを名乗る名称独占の規制に変更。無資格でも報酬を得てガイドができるようになるが、有資格者に認める特定の名称や類似名称は使用できない。
衆院国土交通委員会の12日の質疑応答の中で、観光庁の田村明比古長官は、名称独占となる通訳案内士の位置づけについて「誰でも有償でのガイド行為が可能になる一方で、通訳案内士は、『わが国の歴史や文化に関する正確な知識を有し、外国人旅行者に満足度の高い案内を行うことができる者』として引き続き重要な役割を担っていく」と説明した。
有資格者の活用について石井啓一国土交通相は、「旅行業者などが旅行者に交付する書面に有資格者の同行の有無を明示する規定を新設するとともに、有資格者を積極的に活用するように呼びかける」と述べ、旅行業者などが有資格者を検索できるデータベースの構築、国内外への制度の周知などに取り組む考えを示した。
旅行業法の改正法案は、軽井沢スキーバス事故、訪日旅行の悪質な土産店連れ回し行為などを問題視し、これまで規制の対象外だったランドオペレーターに観光庁への登録を義務付ける。
ランドオペレーターの登録制度について、田村長官は「旅行の安全や取引の公正の確保にランドオペレーターが大きく関わっている状況を踏まえ、登録制度を創設するとともに、下限割れ運賃でのバスの手配や土産屋への悪質な連れ回しを禁止行為とする。安全を軽視した旅行手配やインバウンド客の悪質な連れ回し事案の防止に努める」と説明した。
ランドオペレーターには、旅行業務取扱管理者のような資格試験への合格を要する管理者は求めないが、指定の研修を修了した「管理者」の選任を義務付ける。田村長官は「旅行の安全や利便の確保などの知識を担保するため、研修の受講だけで資格を付与するのではなく、習熟度を測るための修了試験の実施を予定している」と述べた。
また、旅行業法の改正法案では、着地型旅行の環境整備に向けて、旅行業務取扱管理者に「地域限定」の資格を新設するほか、旅行業務取扱管理者を営業所ごとに1人以上選任するとした基準を一定の要件の下で緩和して兼任を認める。
旅行業務取扱管理者の複数営業所の兼任について田村長官は「地域によっては十分な人材確保が難しい場合があることから、旅行の安全、利便に支障が生じない場合には、1人が複数の営業所を兼務できるようにする。地域の旅行業者や宿泊施設などによる体験交流型の旅行商品の企画販売がより容易になり、旅行者にとっても商品選択の幅が広がる」と述べた。