先週ご紹介した、東京と大阪を結ぶ夜行バス商品。これが後に高速ツアーバスと呼ばれることになる。
この商品の主催会社(旅行業法改正後は企画実施会社)であるオリオンツアーは、大都市発のスキーツアーを得意とする中堅旅行会社(ホールセラー)である。
当時、貸し切りバスの閑散期に当たる冬場は、運賃(チャーター代)が低下する傾向にあった。そこで、それらを安く手配し、東京や大阪から長野県などのスキー場に直行するバスツアーを多く設定していたのだ。
往復のバスに宿泊やリフト券をセットにして、旅行者にはパッケージツアーとして販売される主催旅行(法改正後は募集型企画旅行)である。だが、オペレーションから見ると、温泉などへの通常のバスツアーと少し異なる点がある。
通常のツアーであれば出発から帰着まで1台のバスで案内するが、スキーツアーの場合、滞在期間が人によりバラバラなので、バスそのものは毎日、発地とスキー場の間を往復し、希望の旅程に合わせて座席を手配するという方法をとることが多い。また、スキー場関係者らの移動ニーズに応えるため、バス単品の商品も設定される。これらを総称して、一般に「スキーバス」と呼ばれる。
ところが、レジャーの多様化により、スキー人口は(スノーボードを合わせても)減少し、この頃にはピーク(1993年。年間1860万人)の約半分まで落ち込んでいたと言われる。
また、高速道路の延伸やRV車普及などにより、スキー場まで自家用車で向かう例も増えた。オリオンツアーをはじめとするスキーツアー各社の売り上げは低下していた。
一方、2001年にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンと東京ディズニーシーが相次いで開業した。スキーツアー各社は、生き残りをかけてテーマパークへの直行バス商品を企画し始めた。それらの商品が、後にバス業界で大きな論争になることなど、当時の彼らは少しも想像していなかった。
(高速バスマーケティング研究所代表)