先日、中村好明さんが会長、武井俊輔衆議院議員が顧問をされている観光政策研究会主催のデービット・アトキンソン氏の講演を拝聴しました。
「日本人は説明が下手だ」と前置きをして、「なぜ日本の森は美しいのか、自然災害により破壊され、森が再生する過程が美しい。それは世界からみたらとても魅力的な話。こういった経緯で日本の森が美しい理由を説明してほしい」。
また、迎賓館赤坂離宮については「天井をみて、座る位置がわかる。明治時代の建築物は天井をみたら身分がわかる」と続き、「私たちが知りたいのは翻訳ではなく、歴史的背景をきちんと踏まえた説明であり解説。必要なのは翻訳家ではなくライターではないかと思う」。
氏のそんな言葉に深く同意しながら、話題は旅館へとうつりました。
「旅館は堅い。先日、午後2時50分に到着したら3時まで待たされた。夕食はメニューも時間も自分で決められない。朝食は選べますというから何が選べるのかと思ったら、8時か8時半の時間を選べるというだけ。日本の最たる特徴に供給主義というのがある。だが、お金を払っているのはお客だ」。
「それに畳が酷い。1泊2万円ほどの旅館に泊まっても、畳のヘリがすり減っていた。私たち西洋人は床で寝ない。畳を張り替えるくらいの投資をしてほしい」。
厳しい言葉の数々でした。私は「そのスタイルこそが日本を体験する愉しみとして受け止めることはできないのか」と投げかけてみると、「(お客の都合に合わせられないなら)それなら外国人に来てほしいとは思わず、日本人同士で旅館を使えばいい」と苦言をいただきました。
訪日外国人観光客が増えていく過程で変化するべきこと、変化してはいけないことがあると思います。例えば、私たちがこれまでなじみ愛していた温泉マークは、外国人観光客を意識して新たにマークを作るよりも、これまでの温泉マークを周知する努力をしてほしいと個人的には願っています。
今回のアトキンソン氏の言葉をそのまま受け入れるのか、それは旅館の皆さんに判断を委ねるしかないと思っています。
ただ、私が氏の発言で最も納得したのは「訪日人観光客についての会議に、外国人が参加していない。どうして外国人に意見を聞かない」という言葉でした。
氏の言葉を聞いていて、前回のこちらの連載でも記しましたが、在日外国人温泉サークルを作ろうとかと本気で考えています。
(温泉エッセイスト)