【日本政府観光局インバウンド最新リポート 30】フランス人観光客が好む旅行 JNTOパリ事務所 中山理映子 所長


「日本を深く知り、体験したい」

 フランス人には、観光名所をチェックリスト的に訪問する旅行よりも、意味やストーリー性のある旅行、より深くその国の文化や生活に触れることのできる旅行が好まれる。その際のキーワードが、「地方」および「体験」である。

 もちろん、東京、京都は、訪日フランス人の約57%が訪れており、特に、初訪日フランス人の必須訪問先とも言えるが、訪日滞在期間が7~13日が約34%、14~20日が約29%と、長期滞在の傾向にある彼らは、これに地方都市を組み合わせて周遊するケースが多い(2016年訪日外国人消費動向調査)。

 東京などの大都市では、大都会の喧騒の中で忙しく歩き回るため、地方では自然の中を散策したり、地元の美術館に行ったりと、静かにゆったりと過ごすことを求める。特にリピーターは、あまり観光地化されていない地方都市に好んで足を運ぶ。

 フランスで認知度の高い地方都市は、金沢、高山・白川郷、広島・宮島などである。日光や箱根も、東京滞在と併せて訪問されることが多い。この他、高野山、直島、大歩危・祖谷、城崎、松江など、特色ある地方都市が人気だ。最近では、北海道についてもメディアからの取材希望が増えつつある。豊かな自然や雪祭りなど、既知の日本とは趣の異なる景色に新鮮な驚きを感じるようだ。

 JNTOパリ事務所も、招請事業などを通じて新しいデスティネーションの紹介に努めており、現地旅行会社の反応も良い。昨秋の旅行会社招請事業で紹介した松江、玉造温泉、鞆の浦、備前などが、半年後には旅行商品の旅程に組み入れられていたりもする。

 また、フランス人には「体験」が好まれる。書道、茶道、着付け、相撲、料理など、日本の伝統文化を体験できる教室が人気だ。しかし、ここで言う「体験」は、必ずしも「○○教室」の類に限定されない。高野山での宿坊体験や、直島での現代アート巡りなどは評判が良い。

 フランス人の多くは地元の人や日常生活に触れる機会を求めている。訪日外国人消費動向調査によると、フランス人の「訪日前に最も期待していたこと」と「次回したいこと」として、「日本の日常生活体験」との回答がそれぞれ10・8%と43・3%であり、全市場で最も大きな割合を占めている。

 例えば、ガイドが地元の日常生活を解説してくれる飛騨の里山サイクリングや、祖谷の伝統的な民家で地元住民と一緒に食事をする体験も、非常に魅力的に映るようだ。旅館での宿泊も、フランス人にとっては「体験」の一つである。このため、団体向けの大型施設よりも静かで日本情緒を感じられる施設が好まれる。

 最後に、「地方」および「体験」をプロモーションする際の課題として、「言語」の問題に触れておきたい。日本の文化や生活を深く知りたいフランス人にとって、英語、できればフランス語によるガイドや解説は極めて重要だ。それなしでは、せっかくの地方訪問や体験が消化不良に終わってしまう。逆に言えば、その部分に丁寧に対応することで、訪問者の満足度が上がり、リピーターの獲得にも期待ができる。例えば、本年6月に実施したフランス旅行会社招請事業で、京都の庭園で行われた庭師からのレクチャーは、「より深く知ることができた」と大変好評であった。今後の各地での多言語対応に向けた取り組みによって、外国人旅行者のニーズに応えられることに期待したい。

 

 
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