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観光行政 ■第2553号《2010年3月13日(土)発行》  

休暇分散化、議論が本格化
 政府の観光立国推進本部(本部長=前原誠司国土交通相)が設置している休暇分散化の作業部会は、ゴールデンウイーク(GW)と秋の大型連休を全国5ブロックごとに分散させる具体案を示した。企業の有給休暇取得と学校休業の分散化を組み合わせる方式ではなく、一部の「国民の祝日」のあり方を見直し、地域ごとに休日を割り振る方式だ。この具体案に対し観光業界からは、需要拡大への期待の一方で、効果予測や地域への影響などを踏まえた慎重な制度設計を求める声も挙がっている。具体案の提示で幅広い関心が高まる中、休暇改革の機運を生かす議論が求められている。

■内需の拡大
 休暇の分散化は、旅行のピーク需要の分散により観光地や宿泊施設、交通機関の混雑緩和につながり、オンシーズンの旅行費用を低下させるなど、旅行意欲を刺激する効果が期待される。国内観光の振興が地域経済の活性化や雇用の創出をもたらすことから、“財政出動なき内需拡大策”とも言われる。

 観光産業にとっては、ピーク期の定員オーバーなどで吸収できなかった需要を分散化で獲得できれば、旅行商品の販売拡大や宿泊施設の客室稼働率の向上につながる。半面、時期の集中に依存した経営は立ち行かなくなり、事業者、観光地の“優勝劣敗”が明確になる可能性もある。

 分散化の具体案の提示に先立つ、12月の作業部会では、星野リゾート社長の星野佳路氏が「休暇の分散化で埋蔵する内需を顕在化させるべき」「旅行者の満足度を高めても、高めなくても、休日は客で埋まるという競争環境の甘さが観光産業の国際競争力を低下させている」と意見を述べた。

■具体案への反応
 作業部会が提示した具体案に対しては、休暇改革を推進したい観光業界からも慎重な議論を求める声もある。

 観光18団体でつくる観光関係団体会長連絡会議(議長=舩山龍二・日本ツーリズム産業団体連合会<TIJ>会長)は昨年12月、「観光立国実現に向けた提言」と題した文書を国交省の辻元清美副大臣、藤本祐司大臣政務官に提出。休暇改革については、祝日の分散化ではなく、年次有給休暇の完全取得と連続休暇取得の法制化、学校休業の多様化などへの施策を要望していた。

 作業部会の具体案に関してTIJは、「祝日に焦点が当てられたもので、連絡会議が提言した休暇取得の促進ではない点が残念。祝日3連休化(ハッピーマンデー)の効果などを検証した上で議論した方がいいのでは。観光振興のための案だけに反対しづらいが、慎重な取り扱いが必要だ」としている。

 国際観光旅館連盟の佐藤義正会長は、個人的見解とした上で、「地域への影響を十分に考える必要がある。例えば、北東北のGWは八幡平や八甲田の雪の回廊、麓には桜という絶好の観光シーズン。首都圏の休暇時期が外れると影響は大きい。地域によって出るプラス、マイナスをどう考えるか」。秋の大型連休についても「国内観光の振興にとって各月の3連休をなくして大型連休にするのがプラスなのか、検証する必要がある」と指摘した。

 日本観光旅館連盟の近兼孝休会長も「他の会員からも意見を聞き、考えをまとめたい」と断った上で、「地域、業種業態によって賛否両論あるだろうが、個人的にもいくつかの問題点は思い浮かぶ」と述べた。

■休暇改革の好機
 観光分野だけでなく、生活、経済に与える影響は、プラス、マイナスを含めて計り知れない部分がある。3日の会合で作業部会座長の辻元副大臣は、「1つひとつ問題をクリアし、コンセンサスを得ながら進めることが大事だ」と述べた。半面、休暇改革を実現するには、「最終的には慎重かつ大胆な決断と実行が必要になる」(溝畑宏観光庁長官、2月定例会見で)という側面も否定できない。

 観光産業や地域にとっては、不安材料をそのままにしておけないが、休暇改革の好機を逃すことも大きな損失だろう。休暇改革には「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)という視点も欠かせず、観光を通じた休暇の過ごし方が、旅行消費や雇用の効果以外にも、業務の能率アップなどの生産性向上、国民の心身の健康増進などにつながるとアピールしていく必要もある。国を挙げた議論が活発になる中、観光業界や地域がどのように休暇改革の議論に向き合うのか、重要な場面だ。



「オーライ!ニッポン」グランプリは大地の芸術祭実行委
 農林水産省は5日、第7回「オーライニッポン大賞」のグランプリ(内閣総理大臣賞)に新潟県十日町市の「大地の芸術祭実行委員会」を選んだと発表した。表彰式は10日、東京都内で行われた。

 大賞は、各地で都市と農山漁村の交流を盛んにする活動に積極的に取り組んでいる団体、個人を表彰するもの。審査委員会(委員長・安田喜憲国際日本文化研究センター教授)を設け、決めた。審査委員には日本旅行業協会(JATA)の柴田耕介理事長も名を連ねている。

 大地の芸術祭は越後妻有(十日町市と津南町の両地域を指す)地域の里山を舞台に、3年に一度開催される世界有数の国際芸術祭。現在、760平方キロメートルの広大な大地に約200の現代アートが常設されている。

 回を重ねるに従い、地元食材にこだわるレストランの開業、里山体験プログラムの開発、ボランティアガイドによる里山アーチ観光など、地域の活動も広がりを見せている。

 同省によると、00年の第1回開催時に16万人だった来場者数も、09年の第4回では37万5千人に増加。40カ国(約350組)から参加したアーチストが92集落で作品を展示した。「地域の資源を有効に活用した独自の地域づくりが評価された」という。

 なお、オーライニッポン大賞には「秋田発・子ども双方向交流プロジェクト推進協議会『子ども輝き応援団』」(秋田県)、「地域づくりインターンの会」(東京都新宿区)、「石部地区棚田保全推進委員会」(静岡県松崎町)、「農業法人秋津野」(和歌山県田辺市)の4団体が選ばれている。



農水省、「食の名匠」制度を創設
 農林水産省は料理人を対象とした新たな顕彰制度「食の名匠」(仮称)を創設する。計画ではブロンズ、シルバー、ゴールドのランクを設け、料理人の腕前によって評価する。同省は、「旅館・ホテルで働く料理人も応募資格があるが、あくまでも個人を対象とした顕彰制度」(外食産業室)としている。

 4月に実施要領を公表し、5月から募集を始める。1次、2次審査を経て、9月の最終審査(一品料理の作成と料理人のプレゼンテーション)で決める。「自薦、他薦を問わず広く応募を受け付ける」(同)。

 ブロンズ受賞者は、技術や技能が卓越していると評価されている現役の料理人(和洋の菓子職人を含む)のうち、概ね5年以上にわたり、(1)新たな食品の普及や地域の活性化、食文化の発展に貢献(2)海外における日本の食文化の普及と日本産の食材の利用拡大に貢献──などの取り組みを行い、他の模範とするにふさわしい功績のあった人が対象となる。

 シルバーとゴールドはブロンズ受賞者の中から選ぶ。

 同省は「応募がどのくらいあるのか不明だが、名匠というぐらいだから乱発はしたくない。厳選したい」と話している。



観光庁、休暇シンポジウムを開催
休暇改革のシンポジウム

 観光庁主催の休暇シンポジウム「新たな成長戦略としての休暇改革」が2月26日、東京・千代田区の東京国際フォーラムで開かれた。講演では、伊藤元重・東京大学大学院経済学研究科教授が、“時間の価値”に着目して休暇を促進し、企業や雇用の仕組みを考えてはどうかと提言。また、在日フランス大使館のジュール・イルマン広報部参事官が、バカンスを重視するフランスの休暇制度を説明し、休暇と経済活動は両立し得ると強調した。

 伊藤教授は、「休暇取得・分散化の意義」と題して講演。日本経済が人口減少や産業構造の変化などへの対応をせまられる中、「経済活動には金、予算の制約以外に、時間の制約がある。時間の価値をどう考えるかが重要。休暇はその突破口になる」と指摘した。

 複数の制度が相互に補完して全体を強固にする「制度的補完性」という言葉も紹介。「休暇を分散化させた時、企業活動や雇用はうまくいくのか。制度的補完性の問題が出てくるが、休暇の促進から他の問題を考えた方がよいのではないか」と提言した。

 また、観光立国の実現に休暇改革が重要なテーマだとして、経済学者の「マーケティングとはいかに売るかではなく、価値観をいかに買い手とシェアできるか」という言葉を踏まえ、「外国人旅行者の誘致でも、日本人の余暇、観光に対する価値観が重要になる」と指摘した。

 フランスのイルマン参事官は、有給休暇の100%近い取得率と連続休暇の付与義務、学校休業の分散化など、法律、制度のもとでバカンスを国策として推進していると説明。経済の生産性の高さを示すデータなどを基に、「フランスは化学や医薬、自動車、航空など世界に誇る企業を多く抱える。休暇と経済は両立し得る」と語った。定年後の移住先として海外からの人気が高い「住みやすい国」であることも強調した。

 このほかシンポジウムではパネルディスカッションが行われた。NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也氏、東京都杉並区教育委員会教育長の井出隆安氏、労働政策研究・研修機構主任研究員の小倉一哉氏、東京大学大学院医学系研究科准教授の島津明人氏が意見を述べた。




学観連、新代表に帝京大の小幡さん
決意表明する新代表の小幡さんら

 全国の大学19校の観光系学部・学科・コースで学ぶ大学生161人で構成する「全日本学生観光連盟(学観連)」(入江麻衣子代表=立教大学観光学部3年)は6日、立教大学新座キャンパスで総会を開き、役員改選を行った。新代表には、帝京大学経済学部観光学科2年の小幡沙織さんが就いた。就任あいさつで「皆で協力しあって前進していきたい」と力強く語った。

 学観連は15大学から118人の学生が集まり、昨年6月に発足した、観光を学ぶ大学生の全国横断組織。桜美林大学の鈴木勝教授と横浜商科大学の宍戸学准教授が顧問を務めている。

 現在加盟している学生の所属大学は立教大学、横浜商科大学、桜美林大学、川村学園女子大学、相模女子大学、帝京大学、富士常葉大学、淑徳大学、富山国際大学、日本大学、明海大学、大阪観光大学、東洋大学、玉川大学、関東学院大学、学習院大学、愛知東邦大学、文教大学、明治大学の19校。日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)、国際機関日本アセアンセンター(ASEN)、在日本外国観光局協議会(ANTOR—JAPAN)、日本旅行業協会(JATA)がサーポター団体として運営支援をしている。

 総会にはJTB法人東京の久保田達之助事業開発部長も出席。JTB法人東京が取り組んでいる旅行以外の様々な新事業を紹介した。また学観連の今後の活動に対する協力や、20代市場のマーケティングでのコラボレーション(協業)などを提案した。



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