昨年3月の東日本大震災の影響を踏まえ、政府による「観光立国推進基本計画」の改定作業が進んでいるが、日本経済団体連合会は2月21日、同計画へ経済界の意見を反映させるため「新たな観光立国推進基本計画に向けた提言」を取りまとめた。提言は(1)基本方針(2)目標設定(3)推進体制──の3点を重要なポイントとして挙げ、経団連の考えを示した。 (
提言全文)
経団連は震災からの復興を果たすとともに、国内にリーディング産業を創造することで新たな成長へとつなげていくことが喫急の課題と位置づけ「観光がその重要な一端を担う」と主張。観光委員会(大塚陸毅委員長・山口範雄共同委員長)で観光立国実現に向けた取り組みを進めており、提言も同委が中心となって取りまとめた。
基本計画については、「復興を乗り越え、観光立国に向けて歩み出すためのグランドデザインでなければならない」とした上で、政治の強いリーダーシップの下、ドラスティックな施策を強力に推進する決意を示すべきだと指摘。加えて、基本的な方針と目標、施策を相互に一貫性を持った形で、体系立てて示すことも求めた。
震災に関連して、提言は「震災復興祈念公園」の早期整備を求めた。昨年6月、東日本大震災復興構想会議は「復興構想7原則」の中で、「鎮魂の森やモニュメントを含め、大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析、その教訓を次世代に伝承し国内外に発信する」と指摘。提言はこれを踏まえて、「公園の検討および整備を急ぐべきだ」とした。
また、東北の観光振興の観点から、数次ビザの導入など「震災復興特区法などの枠組みを活用しつつ、規制の特例を設けていくことも検討すべきだ」と提案している。
国内観光の振興では若者、子育て・シニア層など国民各層のニーズに対応できる観光地づくりを急ぐべきだと主張。「特に、旅行ゼロ回層対策や将来の旅行ファンの育成策として、若者向けのリーズナブルな料金の旅行商品や有意義な体験ができたと実感できるようなプログラムの開発について、さまざま関係者が連携して取り組みを進めるべきだ」とした。
地域活性化では「食」の重要性に言及。旅行者の地域ならではの食に対するニーズに対応できるよう、農商工連携や農業の6次産業化など他省庁の施策とも連携して取り組むよう求めた。
一方、国際観光の振興ついては在外公館や入国管理局が「最初に接する日本人、わが国の窓口」であるため、ここで好印象を与えるべきだと指摘。具体的には、ビザ発給緩和や入国審査の迅速化・効率化など制度、手続きの見直しに加え、「おもてなしを意識した総合的な顧客満足度の向上を図る」とした。
推進体制の強化では、観光庁と日本政府観光局(JNTO)の役割分担を明確にすることが急務とし、「観光庁は企画立案、総合調整機能の発揮に専念、JNTOは海外への情報発信機能の一層の強化、独自財源の確保を図るべきだ」と提案している。
提言は観光予算についても触れた。11年度(当初予算)の政府全体の観光関連予算が1830億円であり、総予算(約92兆4千億円)のわずか0.2%にとどまっていることを挙げ「経済への貢献度、観光立国という国の基本方針を鑑みれば、政治のリーダーシップで相応の予算を確保すべきである」とした。