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観光業界人インタビュー 第2871号≪2016年12月3日(土)発行≫掲載
国内客を安定的に増加
外客“受け皿”の整備を

北海道観光振興機構会長
堰八 義博氏


 北海道観光振興機構の会長に堰八義博氏(北海道銀行会長)が就任した。北海道観光のかじ取り役として、北海道観光の現状や課題をどう捉え、どのように取り組んでいくのか、その考えを聞いた。

──北海道観光の現状はどうでしょうか。

 「全体としては概ね順調な状況にあると言える。2015年度の観光入込数は5477万人で、3年連続して過去最高を更新している。けん引役になっているのはインバウンドの大幅な増加であり、15年度は208万人(前年度比35%増)となった」

 「今年は3月に北海道新幹線が開業し、函館を中心とする道南地域の観光が非常に好調に推移している。一方、道東地域は8〜9月にかけて北海道を襲った四つの台風で甚大な被害を受け、観光地への足も一時的に困難となる事態が生じた。上川や道東地域を中心に多くの宿泊キャンセルが出て、影響が大きかった。いまも一部の国道や鉄道の不通区間が残ってはいるが、代替ルートでどの観光地にも問題なく行くことができるので、ぜひ足を運んでほしい」

──課題への取り組みはいかがでしょう。
 
 「先ほど申し上げた好調なインバウンドをさらに伸ばしていくことは当然だが、一方で国内観光客の入込数がここ数年横ばいであり、これを安定的に増加させる策を打っていかなければならない。昨年、他都府県との観光データを比較し、北海道観光の強みや弱みを把握する調査を行った。北海道観光の課題を整理し、強いところは伸ばす取り組みを進め、国内客の拡大につなげていきたい」

 「また、新幹線開業は北海道の高速交通網の幕開けとなるもので、観光をはじめさまざまな分野への効果が大きい。その効果を全道に波及させるための工夫やPRにも力を入れたい」

──外国人観光客の受け入れ態勢は。

 「必ずしも整備が十分とは言えず、国や自治体にも働きかけ、ハード、ソフト両面において相当のスピード感をもって整備していく必要がある。例えば、多言語の表示や案内板、ハラール対応、Wi—Fi環境の整備などが急がれる。その一環として、10月には新千歳空港の国際線ターミナルにカテゴリー3となる多言語対応の外国人専用案内所の設置も行った」

──広域連携DMOについては。

 「全道をエリアとする広域連携DMOの候補法人に登録されており、地域の『稼ぐ力』を引き出しつつ、いかに観光を地域のリーディング産業に育てていくかが重要な役割と考えている。各自治体や関係機関と連携しながら、北海道の観光や食を全道一枚岩になって売り込んでいく、そのリード役をしっかり果たしていきたい」

 「また、各地域では中核となる人材が不足しており、キーとなる人材を求めているので、その育成や各地域のアイデアを具体化し、実現につなげていくサポートを積極的に行っていきたい。そうした考えのもとに、国や道、地元機関と一緒になって広域観光周遊ルートに認定された道東地域の観光地を巡る周遊バスの実現に向けた実証試験にも取り組んできた」

──空港民営化への取り組みは。

 「北海道は広域なるがゆえに、主要空港などからの2次交通の課題がある。国内外からの観光客が到着した空港からスムーズに移動できるように、コミューター航空やバスなどの2次交通を計画的に整備していかなければならない。そういう中で前向きに捉えているのが空港の民営化だ。国管理の新千歳などの4空港と道や市管理の3空港をバンドリングし、運営を民間会社に委託するということだが、これにより路線誘致や空港機能の強化ができ、観光面でもさまざまな可能性が生まれるので、絶好の機会と考えている」

 「東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の民営化を目指しているので、関係する経済団体や自治体と強調しながら、北海道にとって最良の形でスタートできるよう関与していきたい」

──今後に向けた決意を述べていただきたい。

 「他都府県から見ると、北海道は観光も食も、素材として非常に恵まれたモノを持っている。すでに一定のブランドにもなっているが、これに胡座をかいていては駄目だ。まだまだ工夫の余地があるので、現状に満足することなく、それを前に進めていく、もっともっと価値を高めていくという強い意識を持って仕事をしていきたい。さすが北海道と言われる観光立国の実現を目指した活動の先頭に立って頑張っていきたい」

【せきはち・よしひろ】
法政大経営学部卒業後、1979年北海道銀行入行。経営企画室長、経営企画グループ調査役などを経て、2003年6月代表取締役頭取。15年6月から代表取締役会長。16年6月、観光振興機構会長就任。札幌市出身、61歳。

【聞き手・町田真英】


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