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観光業界人インタビュー 第2872号≪2016年12月10日(土)発行≫掲載
「生業」支援が重要だ
大自然と雪の活用を

東北地方整備局長
 川瀧 弘之氏


──観光行政に精通されているようですが。

 「前任地の観光庁では観光地域振興課で2年間全国の地域観光振興に取り組んできました。東北地方整備局に着任し1年近くなりますが、久保成人長官(当時)には大変お世話になりました。インバウンドが急成長する時でもあり、非常に充実した2年間でした。久保長官から観光行政のイロハを指導いただき、おおよそ理解しているつもりです」

──東日本大震災からの復興状況は。
 
 「震災から5年8カ月が経ちましたが、復興の総仕上げの時期になってきています。道路河川の復旧とまちづくりが進んできていますが、一方では未だに約10万人が仮設住宅に住んでいる厳しい状況下。復興からの支援の加速化を図っていきたいですね」

──東北に住む人々の意識はどうでしょうか。

 「観光振興の場合は『ハードだけでなく、ハートも大切』だといつも言っています。東北の方は素朴で温かいが“想う心”の伝え方がうまくない。表現方法にひと工夫することを検討してもらいたいですね。東北の観光の持つポテンシャルは素晴らしいものがあります。日本古来の伝統と文化、歴史、個性が手つかずの状態で残っており、今後はその資源を利活用するということを実践していくべきだ思っています」

──インフラ整備と観光振興についてはいかがでしょう。

 「以前、東北にいたので地域振興のあり方は一応理解しているつもりです。インバウンド観光も含め東北の1人負けと言われており、インフラの整備を担当するものとして、どうやってインバウンドや国内の観光振興を強化し、東北の観光をメジャーにできるかと日々考えています」

 「道の駅の機能拡充も重要です。Wi—Fi整備の拡充や、伝統野菜や物産などの個性と文化を発信しています。また、数年で高速道路がかなり改善します。これまで南北軸(東北自動車道)1本だけでしたが、それが2020年までには仙台から八戸までの約9割の503キロが開通し4本の高速道体制となります。横軸(東北横断自動車道など)の整備が整うと、これまでの遠くて広いという東北の“負”のイメージが解消されます」

 「空港や港湾とも連携すると『観光の大交流時代』に突入する日も近い。今は東北のインバウンドは伸びていませんが、“弱点が強みに”なって、東北の大交流時代が来るものと期待しています」

──観光振興を促進するための課題は。

 「生業(なりわい)支援が重要だと思っています。今考えているのが観光、農林水産業、企業の立地(誘致)の推進。強化を図るにも、運輸局、経産局、民間と連携することが大切です。整備局側に立って言わせてもらえば、国家プロジェクトのインフラは別として、駐車場を作るとか、道路標識を作るとか、河川をきれいにすることが誘客につながる。折に触れ各県に働きかけを強化していきます。大きなインフラ整備も重要ですが、小さな整備の積み重ねも大切です」

──東北の未来を考えたときの地方創生はどうあるべきか。

 「陸路同様、大型クルーズ船が立ち寄ることのできる港湾の整備が必要です。掛け声倒れに終わらない真の連携が叫ばれていますが、各県、各市町村では広域連携が進んでいると聞いています。インバウンドの誘致はバラバラにやっても効果は出ません」

 「新幹線でつながっている各市町村の首長が、連携の重要性を訴えることが多くなってきていることはありがたい。東北観光推進機構を中心に各集合体(自治体)が一丸となって海外のプロモーションに努力されているのは心強い限りです。ただ懸念されることもある。社会インフラの整備が進むと、その地域の個性(郷土色)を失い金太郎飴にならないように努力してもらいたい」

 「東北の最大の観光資源は大自然と雪。その資源を活用することで道は必ず開けると確信しています。東北のインフラ整備の強化を進めることで、東北の持つ観光のポテンシャルが開花する一因にもなる。東北の復興なくしてインバウンドの2020年4千万人という目標の達成は難しい。先に申し上げた通り『ハードだけでなく、ハートが大切』です」

 「国の成長戦略の一つに観光振興が位置づけられ20年にはオリンピックの開催で勢いづく日本ですが、観光庁で培った経験を生かし、整備局が一丸となって1日も早い完全復興を願い、インフラ整備を強化することが、観光の振興に寄与できることだと思っています」

【かわたき・ひろゆき】

【聞き手・平塚真喜雄】


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