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観光業界人インタビュー 第2884号≪2017年3月18日(土)発行≫掲載
“ニセコルール”を制定
「観光税」の導入も検討
ニセコ町長
片山 健也氏
世界的にパウダースノーのスキーリゾートで知られる北海道のニセコ地域。同地域の景観と環境を柱に魅力的な町づくりを進めるニセコ町の片山健也町長に観光への取り組みを聞いた。
──海外客の増加が話題話になっているが。
「ニセコ地域のスキーリゾートは、倶知安町のヒラフ、HANAZONOとニセコ町のビレッジ、アンヌプリなど五つのスキー場で形成されている。昨年度の観光客総数は416万人で、下半期(10〜3月)が209万人。同期の宿泊客数49万人のうち外国人宿泊客が15万人、延べ宿泊数は全体の6割を占める50万人となっている。宿泊施設はホテルやペンション、コンドミニアムなど合わせて約400軒、宿泊規模は約1万6千人で、そのうちニセコ町は約80軒、5400人だ」
──現在のようになったきっかけは。
「ニセコ町は、ピーク時には68万人ほどの宿泊客があったが、その後、31万人にまで落ち込み、大きな危機感を持った。その時に世界をみると観光客が一番多いのはフランスで、近隣諸国から多くの観光客が訪れていた。日本が人口減少社会に入るときに、国内だけでは伸びていかないと思った」
「20年ほど前だが、台湾に行って旅行社を回り、ニセコをPRした。それが2〜3年後に効果が出て、台湾からの観光客が伸びてきた。そのあと香港に行き、そこからシンガポール、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドに足を運び、ニセコ町の情報が広がっていった」
「それから、人づくりがある。民間人がカナダでカヌーを習ってきて、これからはアウトドアだと、川でカヌーを始めた。海外から移住した人が上流でラフティングをやり出した。その人たちの活動を応援し、夏のニセコを売り込んでいたが、冬のパウダースノーがすごくいいと伝わり出し、海外のスキー客が増え、投資家も注目することになった」
──特に力を入れたことは。
「一つはニセコルール。ニセコはスキー場自体での事故はないが、コースから出て沢に入るスキーヤーがいて、雪崩事故が起こる。これを何とかなくしたいと雪崩ミーティングをやっていたが、危険度が高い日には警報を出そう、基準を設けて雪崩情報を出そうということになった」
「新雪の沢で滑りたいスキーヤーは多いが、ロープを張って入れないようにしていた。比較的安全な日でも、全部、そうしていたが、ゲートを作りコースから出られる日を設けた。それがニセコルールだ。これが米紙、ニューヨーク・タイムズで取り上げられ、ニセコでは神秘のパウダーに出会えると特集され、粉雪を舞い上げて滑る様子がネットで広がっていった」
「ルールづくりには、反対意見や軋轢(あつれき)も多く大変だった。しかし、町では20数年前から徹底的な情報公開による住民自治の町づくりを進めており、それを担保する『まちづくり基本条例』もつくっていたので、その成果が生きた」
──観光協会をいち早く民営化した。
「それまで観光協会の事務局も役場がやっていて、何をどこが責任をもってやっているのかはっきりせず、支障も多かった。そこで、町民と町が1千万円ずつを出資して2003年に株式会社にした。全国初だったが、これにより自治体の枠組みを超えた柔軟な事業展開が可能になり、大きな役割が果たせている」
──課題となっていることは。
「リゾートで働く人や若い人たちの住宅とニセコに来た人たちの移動手段の確保だ。特に交通インフラは、地域全体の大きな課題。それから、観光インフラの財源を確保し、自立できる町にということ。いま、宿泊費を対象とする観光税をできるだけ早く導入すべく検討している。また、隣の倶知安町とも話し合っているが、リフト税のようなものも考えていきたい」
──今後の抱負は。
「ニセコ町は、高さなどの規制も全国一厳しいと言われるが、美しい景観と環境が命綱だ。こうした環境や景観が守られ、若い人たちが安心して暮らし子育てできる町、世界からの人たちが言葉の心配もなく安心して滞在できる町にしていきたい」
「そして、12年にインターナショナルスクールを誘致したが、そうした環境整備も進めながら30年、50年先にと持続するニセコ町らしい癒しのリゾート地をつくっていきたい」
【かたやま・けんや】
東洋大法学部卒業後、民間企業に勤務。1978年ニセコ町役場に入り、企画環境課長、会計管理者、学校教育課長などを歴任。2009年10月町長に初当選。現在2期目。ニセコ町出身、64歳。
【聞き手・町田真英】
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