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観光業界人インタビュー 第2889号≪2017年4月22日(土)発行≫掲載
ファッショナブルな国
認知度を上げる努力を
ブッキングドットコム
ジェームズ・ホワイトモア氏
2012年から北アジア地区(日本、中国、韓国)のリージョナルディレクターとして、同地区のブッキングドットコム事業を統括し、今年4月から北ヨーロッパ地区のリージョナルディレクターに就任したホワイトモア氏に、日本の実質的なトップとして過ごした5年間を振り返ってもらった。
──日本をベースに北アジアを統括されたこの5年間に訪日外国人旅行客数は飛躍的に伸びた。
「当社もこの地域でのビジネスを大きく成長させることができた。12年9月に日本に赴任した当時、日本の契約宿泊施設数は2千軒だったが、現在は1万1140軒。またこの間、国内外からの予約件数は20倍になった。当時、拠点は東京・渋谷のみで、スタッフは30人だったが、いま国内営業拠点は東京・表参道、大阪、福岡、札幌、那覇の5カ所となり、約100人の営業スタッフがいる。これとは別に東京・大崎のコールセンターにCSスタッフが200人強いる。さらに管理部門なども含めると350人位になる」
「特に直近の2年間はテレビCM、SNSなどを使ったマーケティングキャンペーンを積極的に展開し、日本人による海外宿泊予約、国内宿泊予約を大きく伸ばすことができた。16年の日本人新規ユーザーの78%の利用目的は国内宿泊予約だった」
──国内宿泊予約で利用した新規ユーザーの属性は。
「40歳以下の若い世代で、関東圏または関西圏に在住。海外にも慣れている人たちといったイメージだ」
──日本地区のこの5年間の成長率は、ブッキングドットコムの他の国・地域と比べて高かったのか。
「元々の取り扱い数値が小さかったため、日本も含めた北アジア地区の成長率は欧米より著しく高かった。成長は2段階だった。まずは13、14年頃のインバウンド予約の伸び、以降はこれに日本人の海外・国内宿泊が加わり、成長が加速した」
──1泊2食付きの旅館の予約は、グローバルOTAのシンプルな予約導線には収まりにくいのではないか。それとも、リゾートなどのオールインクルーシブ、フルペンションの存在も考えれば、特に気にする必要はないのか。
「大きな課題だ。旅館は部屋タイプが一定ではなく、食事の内容も多岐にわたる。子ども向け、幼児向けのメニューと料金体系も存在する。日本人以外にとっては、複雑に感じるだろう。また、初めて温泉旅館に泊まろうとするインバウンド客に対して、宿泊料金に含まれる食事代金の比率が高いこと、旅館での宿泊が日本文化を体験できる非常に価値の高い経験であることを、正確に理解してもらえるように伝えるのは容易ではない。泊食分離も一つの手法ではあるが、それだけが正解とも言えないだろう」
「旅館に泊まろうとする外国人はそもそも日本文化に興味を抱いている。それでも分からないこと、文化の違いからくる勘違いは多い。双方が歩み寄ることが大事だ。ブッキングドットコムジャパンでは、旅館と外国人宿泊客とのコミュニケーションツールを無料配布している。食事の時間や大浴場の使い方などを簡単に英・中・台・韓・タイの多言語でご案内できるペーパーなので、ご活用いただければうれしい」
──英国をベースとした北ヨーロッパ統括ということだが、親日派の英国人として、現地の方々にどんどん日本への旅行をすすめてほしい(笑い)。
「もちろんだ。日本は欧州でファッショナブルな国と認識されている。また、食事、温泉、神社仏閣など新たな発見をもたらしてくれる場所で、治安が良く、特に鉄道システムが整った国と理解されている。ただ、日本はまだまだセルフプロモーションが足りない。認知度を上げる努力は国として続けてほしい。ブッキングドットコムも応援させていただく」
──英国人宿泊客を迎える旅館にアドバイスを。
「客室に紅茶のティーバックを置くときっと喜ばれる。もちろんビール、ウイスキー好きは多い(笑)」
【ジェームズ・ホワイトモア氏(James Whitemore)】
英国ケント大学で仏語・伊語の言語学と文学の学士号を取得。日本人の妻、2人の子どもと暮らす。趣味はフットサル。ラストミニッツ・ドットコム、トラベロシティ、ホテルズ・ドットコムなどの大手OTAでインターナショナルマネジメントを歴任後、08年にブッキングドットコムに入社。英国、仏国、ノルウェーのリージョナルマネージャー職を経て、12年に北アジア地区(日本、中国、韓国)のリージョナルディレクターに就任。17年4月から北ヨーロッパ地区(英国、アイルランド、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)リージョナルディレクター。
【聞き手・江口英一】
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