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観光業界人インタビュー 第2910号≪2017年10月7日(土)発行≫掲載
ニセコの夏観光が変貌
満足度高いリゾートへ
NAC
ロス・フィンドレー社長
国内屈指のスキーリゾートとして海外からも多くの観光客が訪れる北海道ニセコ地域。ゴムボートで川を下るラフティングを始めて夏の観光を大きく変貌させたNAC(ニセコアドベンチャーセンター)のロス・フィンドレー社長に、アウトドア観光への取り組みや北海道観光に対する思いを聞いた。
──来日してニセコに住み、ラフティングを始めることになったきっかけは。
「大学でスポーツ科学と経営学を専攻したが、当時、不景気で専攻を生かす仕事がなかったので、景気の良い日本でと思って札幌に来た。それが1989年。札幌のスキー学校でインストラクターをやっていたが、何回かニセコに来るうちに、自然が素晴らしく、海外からの人もたくさんいて、非常に魅力を感じたので、こちらに住むことになった」
「3年ほど地元企業で働きながら、ガイドを手伝っていた。冬は文句なしに最高だが、夏はやることがなく、人の流れがパタリと止まる。スキーバブルもなくなり、何かをと思いアウトドア観光の会社NACを起こしてラフティングを始めた。カヤックをやっている人もいたが、誰もがすぐに楽しめ、料金も安いラフティングにした。23年前だ」
──冬のスキーがメインのニセコがラフティングで大きく変わりましたが。
「初年は200人が目標だったが、徐々に口コミなどで広がり、1500人になった。いまは年間約3万人が楽しんでいる」
「冬のアクティビティはもちろんだが、さらに1、2人乗りのダッキー、ニセコのフィールドを生かしたトレッキングやキャニオニングにも力を入れ、夏の滞在客が大幅に増えている」
「最初は3人のラフティングガイドを雇って始めた。現在はフルタイムのガイド30人を含め、約80人が働いている」
──北海道のアウトドア観光の環境は。
「何たって北海道はアウトドアが一番の魅力。この素晴らしい環境を生かすために、観光関係者も行政も一致した認識を持ち、一体となって取り組んでいかなくてはならない」
「この地域でも、ホテルや別荘の目の前の大自然を横切る電線や電柱などがある。川や海岸の整備も同様で、アウトドアを売りにする地域では、どうすれば自然を生かせるかをしっかり考えた対応が必要だ」
──アウトドア専門の会社が増えているようですが。
「アウトドア観光は、常に新しいものに挑戦する気持ちがないと前に進まない。社長の役割でもあるが、いまやっているものだけでなく、新しいメニューをいろいろ考えていってほしい」
「また、経営の問題もある。夏だけとか冬だけだとスタッフの給料も確保できないので、通年で回るようにするにはどうするかである」
──ニセコ地域を世界のリゾートとして一層発展させるにはどうしたら。
「アジアの中で、ここのようにスキーだけでなく、夏も登山やハイキング、釣りなどを楽しめるリゾートはないので、早く手を挙げてブランドづくりをすること。同時に、より満足度の高いリゾートにする努力だ」
「そのためにも人材の確保、グローバル人材の育成が不可欠だ。外国人だけでなく、英語、中国語など外国語を話せる日本人スタッフをバランスよく確保することや、大学生を上手に活用する方法を考えてもらいたい。政府も大学生にグローバル意識を持ってもらうことに力を入れているので、リンクできるといい」
──北海道観光のレベルアップも課題ですが。
「北海道の観光地は、まだ何回も行きたいところにはなってない。新聞によると函館や小樽はもう1回行きたい街とされているが、果たしてそうだろうか」
「函館のレンガ倉庫群にしても、おしゃれなレストランなどのあるロマンチックな街かと思って行ったら、雑貨店ばかりで。世界的に有名なサンフランシスコやシドニー、バルセロナなどのハーバーは、地元の人もよく行く素敵なところだ」
「極論すれば、観光地をつくるのではなく、住んでいる自分たちがよく行く最高のところにしなくては駄目だ」
「登別や洞爺、定山渓の温泉も、観光客はホテルだけでなく外を歩きたい。温泉街の通りを歩行者天国などにして、いろいろなことができると、滞在が延び、周辺にも訪れることになる。工夫したいところだ」
──今後の計画や抱負は。
「新しい取り組みとして、森の中でジップラインやツリーウオークなどを楽しむアドベンチャーパークの設置を進めている。国内最大規模のもので、10月にはオープンをと考えている」
「リゾートでは、スタッフに北海道スタイルの服装があったらいい。沖縄に行くと、ホテルも土産品店も、『かりゆし』を着て仕事していて、見るだけで肩の力が抜けてリラックスできる。北海道でも考えたいことだ。アウトドア観光を通じて、地域が良くなることが私の一番の願いなので、しっかり頑張っていきたい」
【ロス・フィンドレー】
キャンベラ大学卒。1989年来日。スキー学校のインストラクターや会社勤務の後、1993年NACを設立。観光庁が選ぶ観光カリスマ。オーストラリア生まれ、53歳。
【聞き手・町田真英】
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