トリップアドバイザーは11月30日、オックスフォード・エコノミクスが調査発表した報告書「トリップアドバイザーの世界経済への貢献」の概要を発表した。詳細は以下の通り。
旅の計画から予約までをサポートする世界最大の旅行サイト「TripAdvisor®」の日本法人であるトリップアドバイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:牧野友衛、www.tripadvisor.jp)は、本日(11月30日)、Oxford Economicsオックスフォード・エコノミクス)が発表した報告書 (“The Global Economic Contribution of TripAdvisor(トリップアドバイザーの世界経済への貢献)”の概要を発表しました。オックスフォード・エコノミクスは、1981年に創業されたオックスフォード大学のビジネスカレッジであるテンプルトンカレッジと協力した商業ベースの研究機関で、世界経済モデルや産業モデルなどの予測や分析ツールを提供しています。今回の調査は、トリップアドバイザーが全世界の旅行に与える経済的な影響を定量化することを目的として、トリップアドバイザーの委託を受けてオックスフォード・エコノミクスが実施しました。
インターネットの出現は旅行情報が伝達される手段と、消費者が旅行を計画・実行する手段の双方を大きく変えました。インターネット出現以前は旅行会社やツアーオペレーターなどの仲介事業者が提供する情報に基づいて消費者が旅行計画をするというスタイルが主でしたが、現在では消費者がインターネット上で情報を入手し、自ら旅を計画・予約するようになりました。オックスフォード・エコノミクスの報告書によると、トリップアドバイザーは「透明性」、「信頼性」、「幅広いコンテンツ」、そして「検索と予約機能」を提供することで、結果的に旅行業界に「新しい旅行」、「より長い滞在」、そして「より多くの消費」を旅行業界にもたらしていると述べています。
【オックスフォード・エコノミクス「トリップアドバイザーの世界経済への貢献」の概要】
調査手法:
トリップアドバイザーによる世界的な経済への影響を定量化すべく、2009年から2014年にかけて、100カ国以上を対象とするパネルデータセットを集計。トリップアドバイザーの評価基準と旅行行動との関連性を調べるべく、幅広い計量経済学的調査を2015年に実施。これによりトリップアドバイザーのコンテンツは、旅行活動との間に正の相関を有するのみならず原因因子にもなっていることが明らかになった。
トリップアドバイザーが提供する4つの特性:
オックスフォード・エコノミクスは、トリップアドバイザーが提供する主たる4つの特性を以下のようにまとめています。
1) 透明性(Transparency)
他の旅行者が投稿した口コミや写真があることで、消費者は実際にその施設がどのような場所なのか訪問しなくても知ることができます。例えガイドブックに情報が無い無名の小さな宿でも、トリップアドバイザーで宿泊した人たちの評価や写真を見ることで安心して予約ができたりします。マーケティング予算を持たないような小さなホテルでも、トリップアドバイザー上では大きなホテルと競うことが可能となるゆえんです。
2) 信頼性(Trust)
インターネット出現以前、旅行についての情報は旅行代理店やツアーオペレーターが提供するものが主でした。それが今では、ネットの情報の方を頼りにする人の方が多くなっています。Eurobarometerによると、ヨーロッパの人たちにとって、「インターネットで収集した情報」(46%)は、「友人・知人・家族からの推薦」(56%)に次いで有益な情報となっています。他の旅行者がトリップアドバイザー上に投稿した口コミは公平・公正な情報として信頼されています。
3) 幅広いコンテンツ(Breadth of Content)
トリップアドバイザーに掲載されている宿泊・観光・飲食施設の情報を見れば、その観光地がどのような場所なのか、その全体像を知ることができます。また、特定の観光地内にある複数の施設やレストランの情報を得ることもできます。トリップアドバイザーを使うことで、ワンストップで包括的な旅行情報が得られます。
4) 検索・予約機能(Search and Booking)
トリップアドバイザーで訪れる観光地について検索すれば、エリアごとに施設がランキング化されているので、施設と施設を比較することが可能です。また、宿泊予約サイトへの導線や、施設を直接予約ができるリンクが貼ってあるなど、トリップアドバイザー経由して予約をすることができるので、必要のない仲介業者を通さず予約することができます。
トリップアドバイザーの特性が旅行業界にもたらすプラスの効果:
オックスフォード・エコノミクスは、上記に挙げたトリップアドバイザーが提供する4つの特性「透明性」、「信頼性」、「幅広いコンテンツ」、「検索と予約機能」が、旅行する消費者・旅行業界で関わる事業者それぞれに対して次のようなプラスの影響を与えていると述べています。
■消費者が旅行の決定に自信が持てる(Emboldened consumer travel decisions)
行ったことが無い場所への旅行を計画する際、その場所が実際にどのようなところなのか事前に試すことはできません。そのため、トリップアドバイザーに寄せられた他の旅行者からの口コミ情報や写真は役に立つ情報源となります。Gretzel, Kyung & Purifoyが実施した調査によると、トリップアドバイザーのユーザーの80%以上が旅行者の口コミを読むことで旅の決定に自信を持つことができた、リスクや不安が軽減されたと回答していました*。トリップアドバイザーは消費者の旅行の決定に自信を与えると同時に、新しい場所を訪れてみたい、新しいことを試してみたいという動機も与えます。結果的にそれは (a) 新しい旅行の創出、(b) 新しい観光地を訪問する人の増加、そして (c) 新しい施設を訪問する人の増加にも繋がっています。
(*Gretzel, Kyung & Purifoy (2007) survey from 1480 respondents)
■消費者がより良い旅行体験ができる(Better travel experiences)
トリップアドバイザーで透明性の高い情報が豊富に提供されることにより消費者はよりバラエティに富んだ、より良い旅行を体験することが可能となりました。これにより、従来よりも旅先でやりたいことも増え、(a) 旅先により長く滞在する人も増えました。また、トリップアドバイザー上で提供されている検索・予約機能を用いることで、航空券や宿泊施設の価格比較などが容易にできるようになり、消費者は旅行代理店にマージンを取られることなく最安値を探して自ら航空券や宿泊の予約をするなど、以前よりも (b)コストパフォーマンスがより高い旅行が可能となりました。一つ一つの旅行に関わるコストが引き下げられ旅することに対する満足度も上がり、やりたいことや行きたい場所も増えるため、旅行回数も増え、結果的に (c) 旅行消費額の増大に繋がっていきます。
■施設がダイレクトに顧客から評価される(Direct Customer Feedback)
インターネットが発達するにつれ、小さな旅行事業者もトリップアドバイザーのような口コミサイトやSNSを活用して大きな事業者と競争することが可能になりました。ユーザーからの口コミは、施設のサービスや設備などに対する顧客のダイレクトかつ率直なフィードバックです。施設側が口コミを顧客のニーズを把握することができる有効なツールとして捉えられれば、(a)口コミを参考にサービスを向上することができます。また、顧客からの声に耳を傾けることで顧客のニーズをより深く理解できるようになるので、(b)顧客とのより良い関係構築が可能になります。それがサービスの向上に繋がり、結果として、(c) ポジティブな口コミの集積が実現します。
■施設が提供する質の高いサービスが評価される(Reward for Quality)
事業者が質の高いサービスを継続して提供することで、プラスの要素が色々と生まれます。例えば特定のホテルに宿泊して満足度が高かった顧客は定宿としてそのホテルを利用するようになり、施設側は (a) リピーターを確保できるようになります。また、トリップアドバイザー上で評価が高ければ、少々宿泊費が高くてもそのホテルに泊まりたいと思う人が増え、事業者側は(b)価格競争を回避できるようになります。また評価が高いとトリップアドバイザー上でランキング上位になるなど、(c)より多くの人の目に触れるようになります。
これらを踏まえ、オックスフォード・エコノミクスOxford Economicsは、トリップアドバイザーが「新しい旅行」、「より長い滞在」、そして「より多くの消費」を旅行業界にもたらしていると述べています。
2014年の旅行業界に与えた影響:
オックスフォード・エコノミクスは、2014年にトリップアドバイザーがもたらした具体的な影響を以下のように述べています。
■世界で2,200万件の新たな旅行と、3億5,200万泊の新な宿泊を生み出した1
· 2014年にトリップアドバイザーは、2,200万件の新たな旅行(すなわちトリップアドバイザーがなければ実現していなかった旅行)を生み出しました。
· 2014年にトリップアドバイザーは、3億5,200万泊の新たな観光宿泊を生み出しました。トリップアドバイザーのコンテンツによって、世界的な旅行件数が増えたのみならず、1件あたりの旅行日数も伸び、目的地での滞在期間が長くなりました。
■世界で640億米ドル相当の旅行支出を生み出した
· 2014年に、トリップアドバイザーによって640億米ドル相当の旅行支出が生み出されました。これは、2014年の世界の旅行支出全体の1.3%に相当します。(世界的な旅行支出に対するトリップアドバイザーの貢献は、旅行件数と滞在日数の増加から、1日当たり平均支出の減少を差し引いた分です。)
1「生み出した」とは:トリップアドバイザーのコンテンツや機能がなければ実現していなかったはずの旅行、宿泊、支出の増加と定義されます。
【トリップアドバイザーが自社施設に対して与える影響とは】
トリップアドバイザーをご活用いただいているクライアントの皆さまに、コメントをいただきました。
庭のホテル 東京 代表取締役 総支配人 木下 彩 様
『2009年に庭のホテル 東京を開業以来、訪日外国人のお客様が増え始めたので、当施設を選んだきっかけをアンケート調査や直接的なヒアリング等で尋ねたところ「トリップアドバイザーの口コミを見て」と回答する方が多いことが分かりました。具体的な数字として、開業当時は10%に満たなかった外国人比率が、2011年の震災後1年間を除いては徐々に増え、2013年春頃からは平均で50~60%に上っています。(現在、国籍別では欧米豪が6割程度) 実際に、トリップアドバイザーの影響が直接的な要因と立証することは難しいですが、この数字だけではなく、現場で働くスタッフの感触からも、当施設に対するお客様から頂いたトリップアドバイザーの口コミは、非常に影響力があるものと感じております。当施設に寄せていただいたお客様の声を真摯に受け止め、こまめに返信をしていくことで、お客様に好感を持っていただけることがあると思っております。』
旅館 澤の屋 澤 功 様
『家族で経営する「旅館澤の屋」は、高級旅館のような接客はできませんが、泊まりに来ていただいたお客様がまるで家に帰ってきたかのように、ほっと懐かしさを感じてくれるような温かい宿を目指し、日々精進しております。トリップアドバイザーが澤の屋に与えている影響の一つは、「集客」ではないでしょうか。澤の屋は、家族経営の小さな施設なので、OTAを含めた宿泊予約システムなどは経費がかさんでしまい、一切行っておりません。また、お客様の約9割は外国の方々なので、トリップアドバイザーの口コミの評価は当旅館の集客に非常に影響しているとも言えます。(トリップアドバイザーで当旅館を知ったと答える旅行者は、おおよそ4割を占めます。)また、家族でお客様の接客サービスを行っているため、大手高級旅館様と同じようサービス提供は難しいのが現状です。そのため、トリップアドバイザーに書かれた口コミは常にチェックをし、できるだけお客様のご要望に沿えるよう適宜改善しております。その結果、トリップアドバイザーで良い口コミを書いていただいたり、知人などにも紹介をしてくれるお客様が増えてきたりしました。こうした口コミが広がり、20代のバックパッカーのお客様からゆっくりした旅を過ごされたいご年配のお客様まで、世界中の様々な方々から当旅館をご贔屓にしていただいております。』
* 報告書(英文)の全文は以下のリンクから入手できます。
https://d2bxpc4ajzxry0.cloudfront.net/TripAdvisorInsights/sites/default/files/downloads/2687/taoxford_tripadvisor_globalreport_2016.pdf