福島県磐梯熱海温泉の栄楽館(菅野豊社長)は2日、同社が経営する「ホテル華の湯」の開業20周年と「萩姫の湯 栄楽館」のリニューアルを記念した記念講演会と式典を開いた。瀬谷俊雄・東邦銀行会長や渡部速夫・日本政策投資銀行東北支店長、原正夫・郡山市長などの地元政財界、渡部世一・福島民報社社長らメディア関係者、高橋信・JTB東北社長らエージェント関係者、地元取引業者など合わせて約280人が出席する盛大なパーティとなった。
主催者あいさつで菅野社長は「昭和5年、父が磐梯熱海駅前に栄楽館を開業、同45年に社長を継いだ。増改築を繰り返して手狭になったため、新たに土地を取得し、ツインタワーの建築計画を立てて実現した」と同社の歴史を紹介。
これに対し、瀬谷東邦銀行会長は来賓祝辞で「融資担当常務だった21年前、壮大なコンセプトと建設計画に驚いたことを記憶している。旅館経営は最も難しいビジネスの1つだが、バブル崩壊の難しい時期も見事に乗り切って現在の地位を確立された。経営者一族が結束している成功事例だ」とエールを送った。
ホテル華の湯は「女の時代を予感する旅館」をテーマに1988年、3300坪(現在7千坪)の敷地に現在の松風館(90室)を開業。その後数度の増改築で華風館(70室)、「離れ松林亭」(5室)を加え、東北地方で屈指の規模を誇る大型旅館になった。
05年のリニューアルでは、離れ松林亭の5室と華風館ロイヤルフロアの特別室2室にかけ流しの露天風呂を造った。時代を先取りしたハードとソフトをいち早く導入するマーケティング戦略には定評がある。現在は「美人の湯に癒しの力、30種類のお風呂で湯舎(ゆや)めぐり」を宿のキャッチコピーにしている。
萩姫の湯・栄楽館はJR磐梯熱海駅から徒歩3分の立地。今年7月に全57室と展望露天風呂などを全面刷新した。各種の露天風呂付客室をそろえている。
同社はもう一館、全20室の「湯のやど 楽山」も展開している。96年に買収した近隣の宿をリニューアル。6つのかまどを備えたオープンキッチンスタイルの和風「かまどレストラン」を売り物にしている。
当日、式典に先立ち行われた記念講演「俳人・岸本調和 その歴史的意義」では、都留文科大学の楠元六男教授が、磐梯熱海出身の江戸時代の俳人、岸本調和について解説した。調和は元禄年間に江戸を中心に全国区で活躍したプロの俳人でその頃の主流だった。少し遅れて世に出た松尾芭蕉は、現代でこそ高い評価を受けているが当時は全くの無名だったという。
菅野社長