富士通Japanは3月29日、宿泊施設向け無料オンラインセミナー「最新動向や人手に頼らない接客 アフターコロナ時代の新たな施設運営」を開催した。第1部は、船井総合研究所地方創生支援部チーフコンサルタントリーダーの山本真輝氏が「コロナ禍がもたらした新たな業界動向と取り組むべき作戦」と題して講演。第2部は、富士通Japan第二システム事業部の田中愛子氏が「フロント業務における非接触・非対面、利便性向上を宿泊者のスマホで実現」についてプレゼンした。
山本氏は「2021年度の延べ宿泊者数は3億1497万人泊で、19年比で依然として47・1%減。20年比では5%減」と指摘。また「世界の自然災害件数も顕著な増加傾向にある。世の中はVUCA(ブカ)の時代、すなわちVolatility(不安定性)、Uncertanity(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambigulity(あいまい性)に入った」と話した。
その上で、VUCA時代が宿泊施設へ及ぼす影響として(1)過去のブッキングカーブを踏まえたRM(レベニューマネジメント)の精度低下(2)供給不足・不安定によるコスト上昇の加速(悪いインフレ)(3)宿泊客が宿泊施設に求めるサービス水準の多岐化―を挙げた。
宿泊施設が取り組むべきこととして、「単価アップと生産性アップが最重要。19年まではインバウンド増加を背景にした供給不足市場を前提としたRMを軸とした単価アップだったが、現在は前提が崩壊しており、別の角度からの単価アップが必要だ。生産性アップについても、19年まではインバウンドと休日の分散化が繁閑を埋めるための主な取り組みだったが、コロナ禍以降、隔離・待機やワーケーションなど新たな生活様式による需要が発生。それに伴って新たなDXサービスとエンドユーザー変化への対応が必要となっている」と述べた。
SDGsについては、「SDGsへの取り組み情報を発信していない大手チェーンは存在しない。ただ、旅行者のSDGs意識は発展途上であり、増収増益効果への期待は限定的だ。従業員の意識やブランドの向上、優秀な人材の採用など選ばれるホテル旅館を作るための『組織づくり』としての位置づけが現状は適切だろう。短期目線の節約ではなく、長期目標を持ってSDGsへの取り組みの情報を発信し続けることが、選ばれるホテル・旅館づくりにつながる」と解説した。
富士通Japanの田中氏は、宿泊者のLINEを使用してチェックインからチェックアウトまでを完了できる同社の非接触・非対面型DXソリューション「ノータッチステイサービス」を紹介。補助金を活用して同サービスを導入した尾道国際ホテルの事例も説明した。同ホテルの場合は、補助率が5分の4で、上限額が2千万円の広島県観光連盟「デジタル技術等を活用した観光地スマート化推進事業補助金」を使ったと話した。同社では各種補助金の活用、申請についても全国の宿泊施設を支援していくという。