日本観光研究学会は5月26日、東京の立教大学池袋キャンパスでシンポジウムを開いた。「“インバウンド”に観光研究はどう向き合うか」をテーマに、研究者6氏が意見を述べた。各氏は、宿泊施設の整備や観光プロモーションの強化など、インバウンド対策についてさまざまな視点で訴えた。
講演で小野良平氏(立教大学、日本観光研究学会集会委員)、パネルディスカッションで山田雄一(公益財団法人日本交通公社)、栗原剛(東海大学)、カロリン・フンク(広島大学)、小磯修二(一般社団法人地域研究工房)、米田誠司(愛媛大学、日本観光研究学会集会委員)の各氏が登壇。
日本交通公社の山田氏は、外国人を含めた観光客の誘致に向けて、観光地のブランディングの必要性を強調。「従来は人口集中地域にどれほど近いかで集客の規模が決まっていた。しかしインバウンドの振興で状況が変わった。地域資源を生かすことで多くを集客できる。来訪前の期待値をいかに高めるか。観光地における具体的な楽しみ方をプロモーションすべきだ」と説いた。
広島大学のフンク氏は、クルーズの拡大に伴う港湾整備について「1日7千円しか消費しないクルーズ客のために、莫大な投資をするのは疑問だ。投資が海外のクルーズ業者に流れるだけではないか。その研究が必要だ」と指摘。
地域研究工房の小磯氏は、宿泊施設の整備の必要性を強調。「インバウンドは2020年に4千万人、30年に6千万人というのは大変な数字だ。それを支えるインフラは大丈夫か。宿泊施設に対する強力な融資政策がなくなっており、作る必要がある。海外からのマネーは地元でネガティブに見られるが、マクロとして見た場合、地域での消費拡大につながる。考えていかねばならない」と述べた。