全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、多田計介会長)は11月20日、東京の都道府県会館で全国47都道府県旅館ホテル組合の事務担当者対象の研修会を開いた。全旅連がこのほど作成した「旅館ホテルにおける新型コロナウイルス感染防止対策マニュアル」を監修した元厚生労働省仙台検疫所長で健康予防政策機構代表、医師の岩﨑惠美子氏が「新型コロナにどう向き合うか~感染症の正しい知識とその予防対策」をテーマに講演した。岩﨑氏は、ウイルスの感染は飛沫よりも接触の方が多いと考えられるとし、感染防止はせっけんによる手洗いが最も有効な方法とアドバイス、実践を呼び掛けた。
岩﨑氏は、感染症について現在分かっていること、感染を防ぐ方法を中心に講演。まとめとして、「感染症についての正しい知識を持つ」「一般的な感染症の予防法などについての正しい知識を持つ」「手洗いやうがいの励行」「体力を落とさないように十分な栄養と睡眠などを取る」「疲労を蓄積しない」ことが全ての感染症の予防に効果的だとした。
岩﨑氏の発言の要旨は次の通り。
■感染症とは
病原体が体内に取り込まれることによって引き起こされる病気。原因となる病原体にはウイルス、細菌、リケッチア、真菌、寄生虫などがある。
感染した人は、感染の度合いや体調などによっては、体内で病原体を増殖してしまい、体外に排出するようになる。その排出された病原体を他の人が取り込むことで感染が拡大する。
感染症はかかると強い免疫ができる。病気の経験は人には必要。ただ、危険な病気にはかからない方がいい。
感染症は防ぐことはできない。しかし、被害を小さくすることはできる。
ワクチンは病気にかかり重症になったり、死亡したり、後遺症が残ったりするのを防ぐために力を発揮する。
■コロナウイルス
コロナウイルスは現在、約60種が確認されているが、そのうち人にも感染するものは7種ある。
7種のうち、4種は人に風邪を引き起こすコロナウイルスであり、ほとんどの人は6歳ごろまでに風邪として感染履歴がある。残る3種が「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS―CoV)」「中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS―CoV)」、そして今回の新型コロナウイルス(CoV―19)である。
■感染を防ぐには
感染経路は空気中に飛んでいるウイルスによる空気感染、せきやくしゃみによって飛び散るウイルスによる飛沫感染、自分の手などに付いたウイルスによる接触感染の三つがある。
メディアでは患者のせきやくしゃみによる飛沫での感染が主であるかのようにいわれているが、むしろ感染者が自身で排出したウイルスを含んだ唾液、鼻水、便などに触れた手であちこち触り、物や場所を汚染させ、他者がそこに触った手指で自分の口や鼻などの粘膜に触れるなどして生じる接触感染の方が多いと考えられる。
ウイルスは多くの人が触るドアノブ、エレベーターボタン、手すりなどに付いている可能性がある。ウイルスが付着したところに触れた自分の手が一番汚いとの認識、自覚が大切だ。
自分の感染を防ぐには、せっけんでの手洗いが最も有効な方法だ。新型コロナウイルス感染症に限らず、感染予防に最も有効で簡単な方法。外から戻ったときだけではなく、頻繁に行うことを意識すべきだ。
スプレー式アルコールでの手指消毒は大いに有効。コロナウイルスはエンベロープという脂質を主成分とする被膜に覆われており、アルコールやせっけんで破壊することができる。
マスクは自分が感染することを防ぐものではない。感染者がウイルスをまき散らさないために使用するものであることを認識してほしい。
研修会の様子。密を避けるレイアウトで行われた