一部報道機関は26日、国土交通省が観光担当部署を統合した「観光庁」を08年度に新設する方針を固めた、または08年度の予算概算要求に新設を求める方向で検討している、などと報じた。国交省観光部門では、「現時点では具体的に決定した事実はない」と報道の一部内容を否定したが、「観光庁」設置を求める衆参両院の付帯決議、観光団体や経済団体からの要望などをふまえ、08年度予算概算要求の提出期限の8月末までにはあらゆる検討を行う考えを示している。「観光庁」設置は、観光業界の長年にわたる“悲願”だけに、観光立国推進基本法の制定、それに伴う基本計画の決定という機運の高まりの中、「観光庁」実現に向けた動きが注目される。
観光経済新聞社の27日の取材に対し、国交省観光政策課の門野秀行課長は「『観光庁』の設置に関しては、現時点で来年度の予算概算要求、組織・定員要求に盛り込むことなどを具体的に決めた事実はない。もちろん、衆参両院の付帯決議や観光・経済団体からの要望もあり、従来から課題としては検討している。来年度の予算概算要求の8月末に向けても、あらゆる面から検討を進めていく」とコメントした。
「観光庁」設置をめぐっては、観光立国推進基本法の国会審議の中で、衆参両院の国土交通委員会が昨年12月、付帯決議として「観光立国の実現に関する施策の遂行に当たっては、各省庁の横断的な英知を結集しながら、総合的、効果的かつ効率的に行い、行政改革の趣旨を踏まえて、観光庁等の設置の実現に努力すること」を決議している。
観光業界は、観光振興の推進、観光立国の実現のため、以前から「観光庁」「観光省」の設置を要望してきた。今年4月には、国交省に提出した観光立国推進基本計画の策定に関する観光12団体の要望書で、「『観光庁』を設置することを明記する(可能であれば将来の観光省設置を視野に入れることを追加する)」ように要望した。
日本経済団体連合会、日本商工会議所も「観光庁」の設置実現に積極的な姿勢を示している。経団連は今年4月の基本計画に関する意見書で「観光庁等の設置のあり方について検討すべき」、日商は6月21日の08年度観光振興施策に関する要望の中で「『観光庁』の新設が必要」と訴えている。
29日に閣議決定が予定されている、国交省が策定した「観光立国推進基本計画」案では、観光立国の推進態勢について「観光立国推進基本法制定時の国会における決議及び付帯決議と、政府を挙げた行政改革の取り組みの趣旨を踏まえつつ、観光立国推進施策の推進体制の強化について検討する」と明記している。
政界でも「観光庁」設置への動きは加速している。観光振興に取り組む自民党の二階俊博国会対策委員長(前経済産業相)は27日、自民、公明両党の与党幹事長に対し、「観光庁」の設置実現に向けた協力を要請した。
「観光庁」の設置は、観光業界の“悲願”とも言えるテーマだ。行財政改革の中で、新たな省庁の新設が容易ではないことは周知されているが、観光振興にかかわる事業、事務が省庁を横断して多岐にわたる中で、その調整を行い、観光立国の実現に向けた施策を強力かつ効果的に講じる推進母体として「観光庁(省)」の設置を求める声は根強い。観光振興を通じた地域活性化、外国人観光客の誘致が急務となっている中で、その機運は日に日に高まっている。「観光庁」設置の早期実現に期待したい。