大阪府池田市(瀧澤智子市長)が「都市型ワーケーション事業」に力を入れている。地元にゆかりのある起業家について学べる場などを用意し、アントレプレナーシップ(起業家精神)の醸成を後押しする。近年増えている自然環境を生かしたワーケーションとは一線を画す「起業」をキーワードにすることで、同市ならではのコンテンツを生かしつつ、持続可能な都市経営につなげたい考えだ。
ワーケーションへの協力を呼び掛ける瀧澤市長
同市が提供するワーケーションプログラムは、参加者のアントレプレナーシップを醸成し、社内起業家の育成を後押しする内容。
同市は阪急阪神東宝グループの創業者、小林一三氏や「カップラーメンの父」安藤百福氏が自邸を構えた地。両氏ゆかりの記念館などがあることから、両氏の起業の足跡やビジネスの精神を学ぶプログラムを用意した。
このほか、市内の社会起業家との都市農園体験や持続可能な食を学ぶヴィーガンクッキング講座などもラインアップ。宿泊は同市内の旅館「不死王閣」で温泉も楽しめる。体験プログラムの内容は、参加者や参加企業への事前ヒアリングなどを通して、多角化経営やチームビルディングといったニーズに合わせて柔軟に対応する。
ベッドタウンで知られる同市だが、持続可能な都市経営を目的に、21年度から起業をキーワードにした都市型ワーケーション事業の取り組みを開始。今年度はモニターツアーやセミナーを実施し、プログラムの具体化を進めてきた。今後は来年度の旅行商品化を目指し、旅行会社などとの連携を進めたい考えだ。
同市は大阪府の北西の端に位置するが、大阪国際空港(伊丹空港)も立地するなど大阪中心部はもとより全国各地とのアクセスの良さが特長。自館で先行してワーケーションプランを販売している不死王閣によると、北海道からのワーケーション利用者もおり、「池田でのワーケーションのニーズはある」と岡本厚社長は話す。
2月2日に大阪市内で開催したワーケーションセミナーに登壇した瀧澤市長は「ワーケーションに取り組むことは地域資源や地元人材の活用と『事始めのまち 池田』に対する住民の『シビック・プライド』の醸成にもつながる。関係人口の創出など持続可能な都市経営の実現のためにも取り組みを加速させたい」と説明。参加した旅行会社関係者らへの協力を呼び掛けた。
同セミナーには大阪観光局の溝畑宏理事長も参加。講演した溝畑理事長は「池田は空港も大学も温泉もありポテンシャルは高い。発信力のある市長もいる。あとは、小林、安藤両氏の精神が住民に乗り移っているかだ。『起業のまち』を標榜(ひょうぼう)するなら、ぜひ市の職員も起業して、起業を熟知してほしいし、今回のワーケーション事業などを生かして、池田発のユニコーン企業をどんどん生み出していってほしい」と熱いエールを送った。
ワーケーションのリーフレット