山形県は地域を盛り上げるためのさまざまな施策を展開している。その一つが「道の駅」の活用だ。山形市の蔵王エリアでは昨年12月3日、最新の多様な設備を備えた「道の駅やまがた蔵王」がオープンした。県内外からの観光客を呼び込む独自のマーケティング施策や地域活性化の取り組みなど、道の駅の新しい形を提案する。
道の駅は全国に1200以上の施設が存在しているが、「道の駅やまがた蔵王」は、その中でも独自の設備を展開している。産地直送品の固定販売スペースは設けず、物産展やイートインコーナー、マルシェなど、多目的で使用できる「樹氷ホール」を用意。
そのほか、約4台のキッチンカーが収容可能なイベントスペースや、たき火をしながら手ぶらで芋煮が楽しめる「芋煮広場」など、訪れた観光客がさまざまな楽しみ方をできるよう工夫されている。県内最大級の規模を誇る観光物産館「ぐっと山形」も隣接しており、県内の特産品や土産も販売する。
道の駅での車中泊についても、ドライバーにとってうれしい設備を用意。車中泊スペースは1台につき車2台分を貸し出し、余った空間に椅子や机を出し、料理などもすることが可能。トイレや更衣室、パウダールーム(化粧台)なども館内に用意しているため、宿泊に困ることはない。車中泊スペースは1泊2千円で利用でき、災害時は防災拠点としても機能する。
施設一体は山形市と仙台市を結ぶ「交通結節点」としての役割も担っており、駅の東側にはバス停を創設。両都市間を結ぶ路線バスや、東京・新宿や羽田空港、東京ディズニーランドに向かう夜行バスなども運行する。
5月28日には東京・永田町の都道府県会館で東北6県定例記者会見が開催され、道の駅駅長の青木哲志氏が施設の概要説明を行った。
青木氏は駅の入込状況について「今月27日時点で約88万人が訪れた。車中泊スペースも大変好評で、土日は満車状態。近隣のドライバーを中心にさまざまな方にご利用いただいている。『樹氷ホール』の利用状況も、市内の百貨店が閉店したこともあり物産展などが開催されている。ありがたいことに来年3月まで土日の開催スケジュールが埋まっている」と自信を見せた。
今後の戦略については「キャンペーン型の観光集客ではなく、地域が稼げるようなマーケティング活動が必要。来場した車のナンバーを自動で読み取るシステムを導入し顧客情報の収集に努めている。また、施設内にはラジオブースを設置している。広告を出しやすくする仕組みを作り、企業のPRにもつなげることができる」と説明し、地域全体が活性化できるような施策を紹介した。
蔵王エリアでは、蔵王連峰を東西に横断する「蔵王エコーライン」の冬季通行止めも解除され、4月26日に開通した。
記者会見には蔵王ライザワールド(山形県上山市)の営業部副部長兼営業課課長・大場英二氏も登壇し、春季から冬季までさまざまな顔を見せる蔵王坊平高原の魅力を説明。初夏の季節はレンゲツツジが見頃になることをアピールした。蔵王坊平高原では、高原の展望を眺めることができるレトロなリフト「蔵王刈田リフト」も4月下旬から営業を開始している。
施設の概要を説明する青木駅長