江戸時代から続く秘湯の宿
鶴の湯温泉は、乳頭温泉郷の7軒の宿泊施設のうち最も歴史のある温泉宿だ。かやぶき屋根の「本陣」は、寛永15(1638)年に2代目秋田藩主、佐竹義隆公が湯治に訪れた際に警護の者が詰めた建物といわれている。一般客の湯宿としての記録も元禄時代から残されている。
ツルが湯で傷を癒やす姿を地元の猟師が目撃したことから、「鶴の湯」と名付けられたという。鶴の湯温泉の半径50メートル以内には、白湯、黒湯、中の湯、滝の湯と泉質の異なる四つの源泉が湧く。同じ敷地からこれだけの種類の湯が湧くのは珍しい。
乳頭山麓のブナを中心とする森に立地する鶴の湯温泉は、秘湯ファンの人気が高い。その人気を象徴するのが混浴露天風呂だ。源泉は白湯で、湯は底から湧き出している。ほのかに青みがかった乳白色の湯が満ち、湯けむりが立ち上る。ひなびた湯小屋が立ち、夏は木々の緑、冬は雪景色によく映える。
混浴露天風呂以外にも、肌触りや効能、趣の異なる内湯がある。「温(ぬぐ)だまりの湯」「子宝の湯」といわれる黒湯、「美人の湯」で「冷えの湯」の別名もある白湯をはじめ、中の湯「眼っこの湯」、滝の湯「打たせ湯」。この他に女性専用の露天風呂があるほか、宿泊客専用の風呂がある。
客室は本陣、東本陣、新本陣、1~3号館に計34室。本陣にある客室など一部の客室には囲炉裏があり、食事も部屋出しとなっている。名物料理は、みそ仕立ての山の芋鍋、山菜、イワナの塩焼きなど。秋田の伝統工芸、川連塗りの膳で提供する。
鶴の湯温泉は、日本の原風景ともいえる温泉や自然を守り続ける温泉宿が集まる「日本秘湯を守る会」に加盟している。
▽鶴の湯温泉は、秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50。TEL0187(46)2139。http://www.tsurunoyu.com/