土の香する地元食材使う
山形県かみのやま温泉の「日本の宿 古窯」(佐藤洋詩恵社長)は、みちのく東北を代表する名旅館の一つ。
その名前は、敷地内から発掘された、今から約1300年前の奈良時代の窯跡に由来する。同館では素焼の皿に絵付けをしてもらう楽焼を宿泊客に楽しんでもらうほか、館内の回廊には各界の著名人の楽焼の作品を展示、訪れた人の目を楽しませている。約3300枚の中から約千枚を展示。石原裕次郎、美空ひばり、坂本九、岡本太郎と、昭和の歴史を彩った人々の作品はまさに古窯の歴史そのもの。人柄や思想、哲学までうかがえる1枚の楽焼と、同じ宿でくつろぐひと時に思いを馳せながら、ゆったりと過ごせる空間だ。
施設、料理、サービスと、いずれもハイレベルにある中で、同館の料理は最高級のブランド牛、契約農家から直送される野菜など、“土の香りのする”地元の食材にこだわっている。
牛肉は純国産の地元ブランド、米沢牛または山形牛。その中でも牛肉にこだわりがあり、「全国屈指の牛肉を、最高においしいタイミングで食べていただきたい」と、昭和62年、現会長自らが市場に出向き、最高ランクのA5級の牛を一頭買いしたことに始まる。以来、この手法は今に受け継がれ、ステーキ、蒸ししゃぶ、朴葉焼きと、全ての部位に合わせた料理献立を考案。古窯特製のごまだれで食すすき焼きは、特に賞味したい逸品だ。
じゅんさい、だだちゃ豆、蛍いかと、その時期ならではの厳選素材20品を一つ一つ丁寧に盛り付けた「彩り20品」は、食べておいしく、眺めても楽しい自慢の懐石膳。
また、地元の郷土食を生かし、日本の歳時記を盛り込んだ前菜も評判だ。
▽日本の宿 古窯は山形県上山市葉山5の20。TEL023(672)5454。http://www.koyoga.com/
館内の回廊に著名人の楽焼を展示(岡本太郎作品)
その時期ならではの厳選素材を盛り付けた「彩り20品」