【ちょっとよろしいですか 136】 インバウンドを地域で受け入れる 山崎まゆみ


 先月の本連載で、日本政府観光局の中山理映子理事による「インバウンド観光の現状と課題」と題したご講演内容と、JNTOが発表したデータを元に、地方の宿泊施設の可能性についてつづりました。その内容は「地方の宿泊施設はその土地の歴史・文化・風習を体験できる、いわば地域のショールームであるから、そこを強調すべき」「地域を語れる人が積極的に外国人観光客と交流することが大切」というものでした。前回は宿泊という「点」の話題でしたが、今回は地域という「面」で、インバウンドを受け入れる成功例と地域への波及効果についてつづります。

 観光庁の令和5年度の補助事業に、「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」がありました。その中で優良事業が多数生まれています。

 まず、石川県CRAFTOURが実施した「山中漆器の産地において唯一の職人技「叢雲(むらくも)塗」を体感できる漆文化伝承ツアー」です。そもそも山中温泉の漆塗りは、漆器(挽物木地)の生産量全国一で、高い技術を誇ります。本事業を活用し、貴重な「叢雲塗」の現場を体験できるインバウンド向けプライベートツアーを地元職人や地元事業者の協力のもと、実施しました。訪日観光客に漆塗りの独自の価値を実感してもらうことで、地域でも漆文化の伝承などにつながりました。

 このように、インバウンド効果で地域の資源を守るという例を、もう一つ挙げます。

 熊本県の阿蘇カルデラツーリズム推進協議会が実施した「サステナブルな“阿蘇のあか牛”テロワール旅の販路構築」です。この事業では、普段は立ち入ることのできない阿蘇の草原で、あか牛を食す体験ツアーを実施しました。ポイントは参加費の一部を草原保全料として、草原の管理者に還元する仕組みの構築に成功したことです。あか牛の美味しさを伝えるだけでなく、環境問題への解決の一助とする、あか牛のブランディングに一筋の光が見えた取り組みとなりました。

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