先日開催された「人気温泉旅館ホテル250選認定証授与式」に参加できずに申し訳ございませんでした。多くの方から、「山崎さん、探したけど会場にいなかったよね?」とご連絡を頂きましたが、ちょうどその日は、富山県氷見市におりました。
そのことをお伝えすると、「山崎さんが行くということは、氷見にいい温泉やいい宿があるんですね」という反応がたくさん。この時期の氷見といって思い浮かぶのは、やはり寒ブリですから、氷見に温泉が湧いているイメージがないのでしょう。かくいう私も初訪問でした。
昭和の後期に、800メートル以上掘削して湧いた氷見の温泉は、昭和60年代に氷見温泉郷と名が付いた、比較的新しい温泉地です。そのほとんどはナトリウム塩化物泉で、化石海水と呼ばれる強塩化物泉から、飲泉許可が出ているさほど濃くない塩化物泉まで、ナトリウム濃度はさまざまです。
ナトリウム濃度がさほど高くない源泉に関しては、氷見の皆さんは「このお湯はわりと入りやすい」と言っていましたし、地元では、それぞれお気に入りのお湯があるようでした。また、氷見では懇親会や忘年会、新年会などで温泉旅館を食事と入浴のセットで利用しているそうで、旅館名に「民宿」が付くのは地域密着の表れでしょうか。
そう、氷見の温泉は仲間内で楽しむものだったのです。
しかし最近は、コロナ禍に伴う国や地方自治体の旅館改修への補助金を活用するなどして、変化が起きています。1棟貸しでは蔵を使った「叶」や、デザインで楽しませる「あさひや」。ユニバーサルデザインを意識しつつも、アフリカのサバンナで体験した高級ロッジを彷彿(ほうふつ)とさせる、全く新しいタイプの宿「天座(あまざ)」。首都圏や関西からの観光客を想定した気鋭の宿が続々とできていました。
今回の氷見訪問は、氷見市の篠田伸二副市長からの依頼で広報番組「サンデーひみ」に出演するためでした。
篠田副市長はTBSで番組制作をされ、退職後はドキュメンタリー映画も撮影された映像のプロフェッショナルですが、公募で氷見市の副市長に就任されました。
私は旅先で、その土地のケーブルテレビの番組を見ることがありますが、番組の大半は行政からのお知らせを端的に示すばかりで、無味乾燥になりがちです。
サンデーひみは篠田副市長がMCを務められ、ゲストを呼び、氷見の魅力を氷見市民に楽しく伝える、いわば異色の番組です。私をゲストで呼んでいただいたのは他でもない、氷見の「温泉」の良さをアピールするためでした。実際、サンデーひみは広く市民に視聴されているそうです。さすがは元テレビマンのプロフェッショナルなお仕事ですね。
とりわけ氷見のようにこれから観光地としてお客さんを迎える場合は、地元の方の理解と協力が不可欠です。観光業に携わっていなくても、その土地が持つ特有の観光資源を土地の人たちに再認識してもらうことは、地方創生には何より必要。その役割を氷見市が発信する広報番組が果たしていることにとても好感を持ちました。
私の解説を聞いて、氷見の皆さんの地元の温泉の「愛着」が「誇り」へと変わったら、こんなにうれしいことはありません。
(温泉エッセイスト)