さる3月8日、関東運輸局「江戸街道プロジェクト」プロデュースの街道観光実践オンラインセミナーで「効果的な情報発信」について話をしました。
とってもいいタイミングにこのテーマをお引き受けできたと思っています。というのもコロナまん延中に国や地方自治体からさまざまな事業支援が行われ、多くの観光地が施設改修や新たなコンテンツ生成に取り組みました。ちょうど年度末の今ごろに完成し、これから発信していこうというタイミングだと推測しますと、セミナーの一部をここでもつづることにしました。ポイントは五つです。
その1「ニュースに取り上げてもらうためのコンテンツとは」。その2「コアなファンを増やすためのSNS活用術~集客につなげるためには」。その3「発信する際の適した媒体の選び方」。その4「強いコンテンツに成長するか見極める」。その5「外ばかりでなく、地域(うち)にも発信が大切」。
これらを多くの好事例を挙げながら説明しましたが、中でも大変興味深い事例を二つご紹介します。効果的なSNS発信をした成功例と発信する仲間を増やす施策です。
SNSの活用法は、神奈川県箱根で多数の宿泊施設を経営する箱根一の湯グループの成功例を話しました。
一の湯グループがSNSを本格的に始めたのは2020年の春にコロナがまん延し始めた頃です。「まじでコロナウイルス勘弁して下さいプラン」を公開するとツイッターを中心に瞬く間に拡散されていきました。プラン名がユニークゆえに、バズったのです。このキャンペーンは最もフォロワーを増やし、この年の4月~5月にツイッターの拡散力を実感したそうです。
その後もツイッターだけでなくインスタグラムも併せて、20本にも及ぶキャンペーンを展開し、着実に売り上げにつなげていきました。2023年もすでに3本のキャンペーンを実施しています。
最も効果的だったのは、2023年初頭に販売した「新春初売り・いち得クーポン」(宿泊商品券)の販売。ツイッターで告知し2時間後には完売。売り上げ1500万円に達したそうです。ちなみにこれまでのSNSの運用は広報の37歳の男性が担当していましたが、昨年秋からは本腰を入れてマーケティング部を立ち上げ、チームで管理をしています。現在は22歳の女性がメインの担当者です。
SNSでは観光地や温泉地、宿の知名度とフォロワー数は比例しません。要は努力すれば可能性があるのです。
観光業はファンビジネスであることは本連載でもたびたびお伝えしてきましたが、ファン(顧客)を獲得していくのにSNSは効果的な手段です。その心得は「利用者のメリット」と「オリジナリティ」と「親近感」です。利用者が「見たい」「広めたい」と思えば、自ずと拡散してくれます。「お得」「感動」「驚き」「楽しい」「ワクワク」「役に立つ」「面白い」「癒やし」「独自性」といった要素を踏まえ、固くなりすぎないトーンで投稿すれば親しみやすさが出ます。常勤するスタッフならではの視点で隠れスポットを紹介することも喜ばれます。
情報発信する仲間を増やす施策として面白い実例は、高知県アンテナショップ「まるごと高知」によるキャラクター「カツオ人間」です。「カツオ人間」のミッションは「高知を出て行った人」を探すこと。高知の魅力を県外の人に熱く伝えることができる人を探し、仲間にしていき、共に発信していくというプロセスには、強く共感します。事実、広告を打ったり、パンフレットをばらまくよりも、よほど効果的な高知のPRにつながっているそうです。
セミナーでは、プレスリリース作成のコツや地域に観光業への理解を深める方法などもお伝えしました。この様子は、後日、関東運輸局のウェブサイトに公開されます。
(温泉エッセイスト)