インバウンド復活を肌で感じる日々です。東京駅、新宿駅といったターミナル駅、また銀座かいわいも外国人観光客でごった返し、先日、城崎温泉へ向かうために乗り換えた京都駅でも、大きなキャリーバッグを転がす多くの外国人観光客の姿を目にしました。コロナまん延中にはあり得なかった光景にうれしい気持ちがこみ上げてきます。
一例として、鬼怒川温泉にアジアから12人の団体が、3泊4日で訪問予定。滞在期間中は1人200万円を消費するという予約が入り、どのようにもてなすかを考えているという話を聞いたばかりです。
これまでインバウンドの富裕層については、1人消費額100万円という単位で捉えられてきた傾向にありますが、200万円という金額に驚きつつ、今後はさらに高額消費するお客さんがやって来るのだと、私自身も認識を改めました。
海外VIP客用のヘリポート設営も早急に必要だなと感じます。静岡県奥下田に湧く観音温泉には、古くからヘリポートがあります。それゆえハリウッドスターのミランダ・カーが来日した際にプライベートで直接訪ねました。観音温泉の館内には、観音温泉の浴衣を着たミランダ・カーと女将がにっこり笑っている写真が展示してあります。
コロナまん延中は、私自身も観光地、宿泊業の皆さんが生き延びる知恵ばかり思案してきましたが、一気にインバウンドが再開したことで、この1年は別の課題も噴出しそうです。温泉を専門とする私の危惧は、入浴におけるタトゥーとLGBTに関する問題にどう対応するか、です。
まずタトゥーについては、2019年ごろの世論にさかのぼります。
コロナまん延前からさまざまに議論されてきましたし、外国人がファッションやアイデンティティーでいれるタトゥーと、反社会的勢力をほうふつとさせる日本の刺青とは非なるものという認識は、一定の理解を得られていました。
タトゥーに貼るシールが市販されましたが、たとえ温浴施設や宿でシールを用意していても、あまり活用されてないのが実情のようです。
大阪の宿泊施設では「和モノ」「洋モノ」によって分けて入場制限をしていると聞きました。
また成田空港周辺の温浴施設の大半はタトゥーOK、というよりむしろ歓迎の姿勢でした。
定着しつつあったのが、外国人の入浴制限がないことを表記した「タトゥーフレンドリー」です。東京都内の銭湯で使われ、外国人観光客が多い温泉地でも愛用され始めました。「タトゥーOK」という表現よりも、外国人を歓迎している姿勢が感じられて、私はここが着地点になればいいなと願っていました。
LGBTについては、国会でLGBT法案が審議されているのですから、今後、温浴施設や宿の皆さんも避けられない問題です。
現状は、「ひとまず大浴場じゃなくて、貸し切り風呂や部屋付き風呂で対応している」と某大型旅館の女将はおっしゃっています。大変ナーバスな課題ですし、唯一の正解はありませんので、皆さんと共に議論を重ねていきたいと思っております。
(温泉エッセイスト)