【ちょっと よろしいですか 119】「ホスピタリティ」とも「おもてなし」とも異なる「遠戚」の距離 山崎まゆみ


 前から、一度申し上げてみたかったこと。

 それは観光地や温泉地の皆さんがよく仰る「若い女性」あるいは「30代~40代の女性を呼びたい」というターゲット設定についてです。

 本当にそう思っていますか? 時流を見て、言葉が並んでいるだけではないですか? そう設定する理由を明確に言えますか? 10年後も、そう言い続ける覚悟はありますか?

 行政の仕事が多い私は先日も、とある事業の有識者として東北の温泉地へ視察に行きました。

 開湯1300年を誇る古湯。日本を代表する文豪が愛し、シンボルとなる神社に伝統の神楽もある。

 温泉街のメインストリートは100メートルほどしかない小さな温泉地。真ん中には共同湯が存在し、地元の人は家のお風呂には入らず、共同湯に通います。もちろん旅行者も共同湯に入れます。

 自慢は湧出量が豊富なこと。よって湯船に注がれた温泉の回転率が高く、真の「源泉掛け流し」です。ただ源泉保全のために、温泉は集中管理しています。

 1泊の滞在で、下駄と浴衣で歩いても苦にならないコンパクトさが好印象。出会う人が観光客より地元の人の方が多い、温泉地がハレではなくケの風景です。

 最も心に残ったのは、地元の人がフレンドリーなこと!

 それもべたべたに寄ってくるのとは少し異なり、さりげなくそっとそこにいて、困った時には助けてくださりそうな距離感で、絶妙に心地良かったのです。

 この地域も「ターゲットは30代~40代の女性」と掲げています。いいのです、この地域の強みを好む30代~40代の女性もいますから。

 でもこの地域の好むのは、そういう性別や年齢で分けられるものではない。

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