7月6日に開催された全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会「JKK」の定例会議に初めて参加させていただきました。田中美岐前会長のご厚意に感謝を申し上げます。
役員は会場となった京都の「南禅寺八千代」に集まっていたそうですが、会員の多くはオンラインで参加されていました。私も同様です。
毎回、講師を招き勉強会を実施しているそうで、今回は会場となった「南禅寺八千代」の若旦那であり、青年部の広報担当副部長の中西敏之さんが講師。中西さんの講演前に、全17室ある「南禅寺八千代」の客室のいくつかを回り、オンラインでも見学できるという画期的な催しがありました。
これが、実に興味深かった。現地に行かずとも、十分にその場の雰囲気が味わえました。
2011年に改装した1階のお部屋からスタートし、5~6部屋を見せていただきました。コロナまん延前に多くの外国人観光客を受け入れてきた実体験から、「木造こそが日本らしい、京都らしい」と海外からのお客さんの希望に添う改修を行っています。ソファーやテレビは扉の奥に収納。扉を開けて利用します。インバウンドに強い宿の手法ですね。また民泊を意識した部屋作りも示され、現地で参加していた皆さんも興味深げでした。
また「南禅寺八千代」は客室のお風呂に強いこだわりがあります。中西さんが部屋とお風呂を隔てる扉を開けると、参加者からはため息まじりの「わぁ~」という歓声が。その声は臨場感となり、つい私も思わずいっしょに「わぁ~」と声をあげると共感につながりました。
すかさず、ある方が「湿気対策は?」と質問。中西さんが「湿気はあるものです。お客さまから結露を指摘されますが、それはスタッフと共に頑張ってお掃除するしかありません。つまり湿気対策等は特にないのですが、それ以上に開けるとお風呂がある!というお客さまの驚きや喜びを大切にしています」。こうした宿のオーナー同士のやり取りが実にリアルです。
また蒸し暑い京都では坪庭が一般的であり、風が通り抜けることが特徴。そうした庭を取り入れた旅館構造が京都らしいといった中西さんの解説に聞き入ります。夏に涼を感じるように、部屋には籐(とう)の敷物が敷かれているのを見て、その上を素足で歩く感覚を思い出し、猛暑に「南禅寺八千代」を体験したくなりました。
オンラインで参加されていた会員の皆さんからも「泊まってみたい」というコメントが多数あがっていました。
あまたの旅館を体験している私が、なぜ、オンライン上でしかない客室見学を面白がれたのでしょうか。自分でも気になって、その理由を考えてみました。
そもそも「旅館」とはどこかベールに包まれているものです。旅館の公式ホームページには美しい写真は掲載されていますが、それだけです。しかしオンラインでの見学では、ベールの向こう側の流れる空気が感じられました。
さらに特筆すべきは、ただの説明的な映像だけではなく、若旦那が解説してくれ、その場にいた女性たちの声が入っていたことです。リアルな反応こそ、生モノの面白さがありました。まるで生放送を見ているかようなドキドキ感―。これって、きっと一般のお客さんも見たい映像になるのではないか、宿に誘うきっかけになるのではと思いました。
ポイントは、ただの説明動画にとどまらず現場の声が入っていること。ご主人でもいい、女将でもいい、部屋を見せながら旅館の内緒ごと、裏側などを少し話して下されば、その動画は親近感を持たれる。オンラインでもお客さまとの心の距離を縮められたら、メリットは大きいですよね。
(温泉エッセイスト)