【にっぽん銘菓の旅3】「萩咲く秋の杜の都・仙台」 中尾隆之


とろりクリーミーな洋風味が人気「萩の月」

 秋の七草の一つに萩(はぎ)がある。8月下旬~9月下旬、紅紫色の蝶(ちょう)形の花が房状に群がり咲く。万葉集に最も多く詠まれている花で、古くから日本人に親しまれている。萩の名所も数多くある。

 札幌の滝野すずらん公園、仙台の野草園、水戸の偕楽園(かいらくえん)、東京の向島百花園、奈良の白毫寺(びゃくごうじ)、香川・観音寺の萩原寺などが有名だが、印象深いのは色鮮やかなミヤギノハギなど1300株の咲く仙台市の野草園。

 萩は宮城の県花で仙台の市花。萩を名に採り込んだ「萩の月」は仙台銘菓として広く知られている。


とろりクリーミーな洋風味が人気「萩の月」

 菓匠三全(さんぜん)が40数年前、新製品の開発に取り組む中、洋菓子で人気のシュークリームとカステラに着目し、これを一つに合わせた菓子をと試作を重ね1979年(昭和54年)に発売した。

 とろりとしてまろやかな甘さのオリジナルのカスタードクリームをふんわりしたカステラ生地で包んで蒸し上げた饅頭(まんじゅう)形の菓子で、舌も気持ちも和む甘さ。

 菓名は萩が咲き乱れる宮城野(仙台平野)の空にぽっかり浮かぶ名月のイメージからの名付け。風雅なイラストの紙箱も目をひく。

 発売9年後、仙台―福岡便就航の東亜国内航空(現JAL)の機内サービスに採用され大きくブレーク。全国菓子博覧会で食糧庁長官賞受賞もあってみるみる知名度がアップした。

 各地で「〇〇の月」がたくさん生まれたのは人気の証。菓子で初めて採用した脱酸素剤(エージレス)で賞味期間がのびたことも大きい。

 菓匠三全の創業は1947年(昭和22年)。蔵王町での飴(あめ)屋から始まり、今は100種類を超える和洋菓子を製造販売するなど県下有数の店に発展した。


青葉城跡から見下ろす仙台市街

 仙台は伊達氏62万石の城下町。石垣と大手門櫓(やぐら)のある青葉城跡や伊達家廟所の瑞鳳殿などゆかりの史跡が多くある。伊達政宗公の騎馬像からは人口108万余の中心街が見下ろせる。

 すぐそばに名曲「荒城の月」詩碑と作詞者の土井晩翠の像がある。歌の名の菓子があってもおかしくないが仙台にはなく、作曲の滝廉太郎が中学時代を過ごした竹田(大分県)に、黄身餡(あん)を包む丸く白い饅頭の銘菓「荒城の月」がある。

 政宗公といえば仙台名物の「ずんだ餅」は公が陣太刀(じんだち)で豆を磨りつぶしたとの説もある郷土食。賞味は1~2日だが冷凍保存で手土産や取り寄せOKで、今や仙台を代表する土産菓子の一つになった。(紀行作家)

【メモ】=菓匠三全広瀬通リ大町本店(TEL022・267・3000)。6個箱入り税込み1500円(地方発送可)。

 
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