9月中旬あたりから新型コロナの新規感染者が激減し、それに伴い旅行業界もにわかに活気づいてきた。とはいえ、まだまだコロナ前の水準には程遠く、Go Toをはじめとする支援策の早期実施が望まれている状態である。新型コロナは観光業界に甚大なダメージを与えたことは間違いないが、一方で新型コロナがなければ生まれなかったものもあることも事実である。アフターコロナを迎えるにあたり、元に戻すものや、そのまま続行するものなどの吟味が必要になってくると思う。今号では、いくつかの事例を基に考えていきたい。
新型コロナがもたらした大きな事象としては「非接触」というキーワードが挙げられる。このことは特に旅館の接客の在り方を変えるきっかけとなった。
例えば、チェックイン後の部屋へのご案内や、客室内でのご案内をコロナ禍で中止せざるを得なくなったケースがある。ご案内の代替策として、デジタルツールを用いてフロントでのご案内に切り替えたところ、お客さまからの不満は特になく、かえってスタッフの業務効率化につながったため、コロナ後も原則、そのスタイルで実施しようということになった。
同様のケースで布団敷きサービスもある。非接触のために、チェックイン前にあらかじめ布団を敷いておかざるを得ないケースがあり、お客さまからのお叱りを覚悟していたが、全くそんなことはなく、むしろ、到着と共に寝転がれて良かったという声さえあったという。あるいは布団をお客さま自身で敷いておく体制にした旅館も、特にお客さまからのご不満もなく、業務効率化ができたため、コロナ後もその体制で実施することが決まっている。
また料理においても、部屋食の価値が見直され、部屋食への人気が高まった。しかし、部屋食には人手がかかることから考案されたのが、松花堂弁当スタイルや、お重スタイルのような、こちらも非接触をテーマに1回で料理を提供して、あとはお客さま自身で楽しんでいただくというスタイルである。こちらも非接触で安心だという声のほかに、気兼ねなく食事ができて良い。コロナ後もこのプランを望むという声があった。新たな食事の提供スタイルが誕生したのである。
これらはコロナという強力な圧力がなければ、思いもよらなかったものであったと思う。変革したものを見つめ直し、コロナ後も活用できるものはぜひ活用してみてほしい。
(アビリブ・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)