2023年5月の宿泊統計調査の速報が発表された。それによると外国人延べ宿泊者数は19年(コロナ前)同月比で、わずか8%減の約900万人となったことが明らかになった。このことから、訪日外国人者数そのものが19年対比の35%減であることに比較すると、宿泊の戻りがいかによいかということが分かる。実際の肌感覚としても、東京を中心とする大都市圏は明らかに海外ゲストの数が増え、一時期は宿泊施設が取れないというコロナ前をほうふつとさせる現象が起きていた。
さらに、今後は5月より水際対策が緩和された中国人の方の訪日&宿泊需要や、円安を背景とした訪日旅行の割安感による観光客の増加などが見込めるため、さらに増える可能性が高い。
インバウンドが回復する一方で、コロナ前同様に課題も改めて浮かびつつある。その一つが先行予約対策である。当然ながら海外ゲストの予約は国内ゲストよりも早い。予約の動きが早くなること自体は良いことであるが、問題はキャンセルである。Webを通じてボタン一つで国をまたいで予約ができてしまうのでキャンセルもボタン一つで成立してしまう。ましてや国内ゲストのように電話をかけてキャンセル料を請求することが難しいので、泣き寝入りというケースも多いのが実態なので、しっかりと対策を講じることが大事である。
まずは、本コラムでも再三取り上げた現状の日本の宿泊施設のキャンセルポリシーが緩いという問題の改善である。3日前から発生するという施設が多いが、3日前ではキャンセル後の集客が間に合わない可能性が高い。インバウンドの多寡に関わらず、実態に即したキャンセルポリシーを検討すべきであると思う。
さらにキャンセルポリシーを設定したとしても、現地の支払い設定では、これまた請求漏れが起こる可能性が高い。そこで、インバウンドが活況のエリアでは、先行予約は事前カード決済限定にする対応や、返金不可プランで対応する施設も出てきている。
ただし、キャンセル規定を高めることは予約時のハードルにもなるので、大事なことは「予約をコントロールする」ということである。インバウンドが日本の観光業に福音をもたらすことは間違いないので、上手に付き合うことがポイントである。
(アビリブ・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)