今号では、引き続き人手不足攻略に向けて考えていきたいと思う。今回は「採用はトップがやるべき」というテーマである。大企業はともかくとして、中小企業の多いホテル旅館業界においてはトップ自らが採用活動に関わるべきであるという話である。こういうと、「最終面接はしています」という声が聞こえてきそうであるが、それだけでは足りなく、もっと前の段階の採用設計から関わるべきである。
具体的には、まず「募集要項を書く」というところから始めてほしい。これも実験知として分かったことであるが、同じ募集内容でも募集要項の表現の仕方で応募率はガラリと変わる。「自社の魅力がきちんと表現されているか?」「来ていただきたい人材がターゲットとなっているか?」など、チェックポイントはいくつかあるものの、経営者自らが記載することで「募集要項に魂を込めること」ができるという点が一番大きい。やはり熱量が段違いであり、それは応募者に確実に伝わる。
また、自ら募集要項を書くことで、その応募がどうなったのか? なぜ応募が来ないのか? など必然的に興味関心が湧くので、他社の募集要項を見たり、待遇面を見たりと、「定点観測する」という習慣づけができるので、その作用も大きい。そうすることで、他社よりも待遇面で劣っていると気付いた時に、待遇面を変えることも、改善しようと経営目標に入れることも可能になる。いずれもトップである経営者にしかできないことである。
そして、自ら採用活動を行っていると、良い応募者が来た際にスピード感を持って直接面接に臨むこともできる。人材系の会社も、「中小企業が大企業や競合に打ち勝てる秘訣は、大企業が二つも三つも選考フローがある間に、トップ自らが情熱&スピード感をもって応募者を口説くことである」と述べていた。
トップは採用活動に半分以上の時間を使ってくださいというアドバイスをする本もあったが、あながち間違いでもない。せめて20%の時間を注ぎ込んでほしいと感じているが、まずは自身がどれくらい向き合えているかを確認してほしい。
(株式会社アビリブ・株式会社プライムコンセプト 内藤英賢)