国境を越えた協力体制の構築を
アシアナ航空は昨年3月9日、日本就航後30年で初めて日韓線全便を運休した。その後、5月に成田―仁川、7月に関西―仁川路線の運航を再開し、ビジネス・レジデンストラックの開始もあり、秋には福岡、名古屋でも運航再開にようやくたどり着くことができた。しかし、今年に入り水際対策の強化により外国人新規入国停止措置がとられ、変異株の発生と日本国内での感染状況に改善の兆しが見られない中、運休中の札幌、仙台、宮崎、沖縄路線の再開と、運航中路線の便数拡大にはまだまだ遠く及ばず、アシアナ航空の日韓線旅客便運航便数はコロナ前と比べて7%にとどまっている。
一方、世界各地でワクチン接種が進んでおり、欧米の早いところでは今夏から秋にかけて集団免疫の獲得を予測する国も出てきた。ギリシャやイタリアでは、ワクチン接種を終えた旅行者に対して入国後の隔離措置を撤廃し外国からの受け入れを再開する動きもあり、少しずつではあるが昨年より確実にポストコロナの時代に向けた動きを感じられるようになってきた。今後、条件が整った国や地域から順番に必要な防疫措置を講じた上での観光旅行再開の加速が期待される。
アシアナ航空では、Asiana Care+新型コロナ対策本部を設置し、感染症予防をタイムリーに実施しているが、これからは観光業界とも連携して各国、地域が求める防疫措置に対応する体制をしっかりと整え、本格的に観光のお客さまをお迎えする準備に取りかかる時期にさしかかっていると考えている。
日本では、東京オリンピック・パラリンピック開催後、高齢者向けワクチンの接種が進んだ秋以降からはイン、アウトバウンド両方の再開に向けた動きが本格化すると思うが、その時点で既に1年半以上の国際観光旅行の空白期間が生じていることになる。久しぶりの海外旅行の再開に消費者の関心が高まると期待されるが、この間、消費者が海外旅行に求めるものがどのように変化したか、インバウンドを受け入れる観光地が安心して観光客を迎えるにはどのような体制が必要かなどの検証が必要となってくる。
コロナパンデミックによって、グローバルな人の動きがもたらす大きなリスクを思い知らされたが、人口減少の時代にあって、特に日本は今後も引き続きインバウンド需要の誘致が課題となってくる。日本に限らず隣国の韓国や成長著しい近隣アジア諸国でも航空、観光業界ともに大きなダメージを受けた。再びこのようなダメージを受けない観光産業の在り方はどのようなものか、国境を越えてお互いに知恵を出し合う、協力し合う動きにつながっていけばと思う。航空会社は、お客さまの安全輸送、感染症予防とともに、観光業界の国境を越えた協力体制の構築にも橋渡し役としてお役に立ちたい。