【コロナ新時代への提言】伊豆急行 社長 小林秀樹氏


小林社長

需要獲得への取り組みを

 1年以上に及ぶコロナ禍は、「不要不急」で観光需要を激減させた。業界各社創業以来の業績低迷となり、大規模な経費削減や事業構造の変革を迫られている。

 現在も、変異株の台頭、感染拡大により、3回目の緊急事態宣言が発出され、今後の旅行動向は全く予断を許さない状況といえる。

 訪日外国人や国内団体旅行の需要は、この先回復に相当な時間を要し、出張需要も、テレビ会議の浸透で、完全な回復は見込めない。唯一個人旅行が比較的早く回復をすると思われる。

 従って、今後は個人旅行のカテゴリーの拡充に的を絞り、ここに海外志向の方々や団体志向の方々、さらにはあまり旅行に縁のなかった方々などを新たな需要として獲得する取り組みが大切である。

 個人旅行への取り組みのキーワードは三つ。

 (1)「安・近・短」

 「近」と「短」はそのままだが、「安」は「安い」ではなく、「安全」の意で、「非接触」「分離」「貸し切り」などが、「安さ」に代わる価値となり、その上で個々のお客さまに響く、「非日常」など魅力あるコンテンツを提供することがポイントとなる。

当社と東急で展開する観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」もこの役割を果たせるよう展開していきたい。

 (2)「デジタルコンテンツ」

 近年各地でMaaSの実証実験が行われているが、シームレスで周遊性に富んだ旅行は個人旅行にとって利便性が高い。非接触型も大きな魅力で、一日も早い全国での展開が待たれる。

 一方、スマホの位置情報やQRコードによる、デジタルスタンプラリーも近年人気が非常に高い。

 旅行分野において、まだまだDCの活用の余地は高く、産官学で取り組めば、面白い提案もできそうだ。プレーは個人だが、ネットには大勢の仲間がいる。そこに観光地のイベントが加わると、リアルロールプレイングゲームが誕生するかもしれない。

 (3)「発信」

 ブームはSNSから生まれ、消費や旅へとつながる。多くの方が家にこもる今、VRやドローンなど最新技術を駆使し、インフルエンサーも活用し、地域の魅力や映えるコンテンツを動画で配信し、地域のブームを作りたい。伊豆急行が監修した「黒船電車運転席VR」が発売された。伊豆旅行ブームの形成に少なからず寄与することを願っている。

 EUは、ワクチン接種や検査状況を表示する、「デジタルグリーンパス」導入にむけて動き出した。問題もあるが、業界にとって、安全と経済の両立を早期化する可能性が高く、わが国も前向きに考えてはどうだろうか。

 旅は古来から人類になくてはならない「不要不急」であり、形は変化しても必ず復活する。観光事業者同士、今こそ知恵を出し合い、乗り越えていきましょう。

 
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