コロナの感染が急に収まりキツネにつままれたような気がしている。テレビの画面を見ると、いずれ第6波が来ると専門家はしきりに恐怖をあおるが、そもそも、急に収まったことを解析できない人たちの話など信用できるはずがない。
さて、われわれ、コロナ禍の影響を最もひどく受けた業界にとって、実は、本当の困難はこれから始まると言っても過言ではない。なぜなら、2年にも及ぶコロナ禍の中で、大半の旅館が緊急融資を受けており、当初は、まさか2年も続くとは思っていなかったので、十分に用意したはずの資金もついには枯渇し、追加で融資を受けざるを得ない、というのが、全国の旅館の平均的な姿ではないだろうか。コロナ禍を何とか、乗り切れそうな状況になってきたこの頃、さて、来年以降、どうやって経営していこうかと考えた時、緊急融資で膨らんだ負債額を見て、これを長期間かかって返すということがいかに大変なことか、と気づくはずだ。
旅館は装置産業であり、建物を建てるには銀行からの借り入れが必要である。その返済に加え、コロナの返済も加われば、経営が非常に苦しいものになるのは目に見えている。無論、政府も当然そのことは理解しており、財務の処理に関しては、さまざまなアイデアが議論されている。しかし、今、われわれが求めなければならないのは、何らかの方法で負債をなくしてほしいということである。今、最も、使い勝手が良いのは、劣後債で処理する、ということだろうが、ぜひ、もう一歩踏み込んで、負債そのものの処理をいち早く行ってほしい、と要求したい。その際、経営者に責任があろうはずがないのは当然である。
恐らく、あと数年もたてば、コロナの借金のことは一般社会から忘れ去られ、われわれだけがつらい思いをすることになりかねない。今こそ、政府には、強く、借り入れの処理を迫ってゆくべきだと思われてならない。
(委員・笹本健次=山梨県湯村温泉・常磐ホテル)
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【委員会より】
全旅連ポストコロナ研究委員会で9月に取りまとめた、「緊急要望提言」においても第一に「経営および金融支援の強化」10項目を挙げさせていただきました。2020年4月からの緊急事態宣言発出後、ほとんどの宿泊施設は緊急融資を受けたものと思われます。そこからさらに事態は悪化していったわけで、約20カ月もの間の需要がすっぽり抜け落ちている形になります。
笹本委員が指摘されるように、この負債増加の責任を宿泊業経営者の責任に帰すことは、まさに理不尽であり、あってはならないと思います。
ただし、事実としての負債増加は存在しており、金融機関等はその前提で取引態度を決定することも現に発生してきています。
委員会でも緊急アンケートを実施しました。2021年に入り融資相談をした宿泊施設(288社)中、109社では意向通りの結果とならなかったとの回答を得ています。今後、さらなる注視が必要です。