昨年2月から始まり、今も続いているコロナ禍は、組織にとってリーダーシップがいかに大切かを思い知らせてくれたと思う。
私が理事長を務める山梨県では、グリーンゾーン認証という、飲食店や宿泊施設向けのコロナ対策を行い、それが大きな成果を出している。この仕組みは、昨年の7月にスタートしており、県旅連に加盟している施設の大半が認証を取得していて、しっかり根付いている。
そもそも、この制度を考え、実行を指示したのは長崎山梨県知事であり、それ以前から、長崎知事のスピード感あふれる実行力と決断力は傑出しており、それまでのんびり構えていた県の職員たちは、知事の異次元のスピードに必死になってついてきているとうわさされていた。
そんな状況の中でコロナ禍が発生し、長崎知事は感染対策をしっかりと行った施設に認証を与え、営業自粛などはしない、という方針を出した。しかも、この対策は厳格で、約40項目の対策を行って申請を出した施設には、係員が現地調査に入り、OKが出るまでダメ出しをする、というものであった。
しかし、決して、厳しいだけでなく、対策を行う施設には1軒300万円の対策補助金が出て、しかも、さらに小規模施設に対しては、150万円(ハードの改善)が追加された。合計450万円である。これだけの金額を出してもらえれば、皆がやる気になるのは当然で、一気に認証施設が増えて、感染者も少なく、現在に至っているのが、グリーンゾーン認証なのである。
他の県が、対策のいかんにかかわらず、一律で営業時間の短縮や営業自粛を行っていて、不公平だと不満が募る一方で、山梨県では、グリーンゾーン認証取得の施設は、何の問題もなく堂々と営業を行っている。これは、民主主義の根幹ともいえる素晴らしい発想であるが、ほとんどの県が最初からそんな対策は不可能だと諦めてしまうことを、リーダーシップを発揮して行ってしまうというところに、最大のすごさがあるのだと思う。やはり、リーダーシップの大切さは全てに優先されるのである。
(委員・笹本健次=山梨県湯村温泉・常磐ホテル)
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【委員会より】
当委員会でも山梨県を実際に視察いたしました。痛感したのは、事業者、県当局、そして県民の一体となった取り組み姿勢です。ここに至る端緒となった、長崎知事の先見性と実行力にこそ、危機に直面したリーダーの力を感じることができます。個々の宿泊施設の経営にあってもステークホルダーと一体となった取り組みが何より望まれるところではないでしょうか。