都心に向かう満員電車の車窓から澄み切った空を見上げ、「桜の堅いつぼみがやがてふんわりと花を咲かせるように、都市部に集中した人が各地に広がっていったら、未来にどのような効用があるだろうか」と考える。
総務省発表の人口移動報告(2016年)によると、東京圏への転入は11万7868人であり、21年連続の転入超過と、人口集中には歯止めがかかっていない。また、生産年齢人口が東京圏に集中しているにも関わらず、東京都の出生率は1・15人と全国で最も低い。
各地から人を引き寄せつつ、出生率の低い現状を見ると、人口減少の負の循環に陥っていると思わざるをえない。改めて地方創生の重要性を認識するところである。
故郷の清里高原を訪れる度に、自然の中で五感を研ぎ澄ませ、穏やかに過ごすわが子を見て幸せを感じる。それでも、筆者自身が地方に拠点を移せない理由は二つあった。まずは所得の確保、そして教育環境への不安だ。観光カリスマ・山田桂一郎氏など、各地で問題解決に奔走され、そこに住まう方を生き生きと輝かせる人々と出会い、観光が地方創生に担う役割、可能性、そして魅力を知った。
観光振興による交流人口の増加は、シビックプライドを醸成し、豊かなライフスタイルはさらなる観光客を呼びこむ。今、各地に観光を基軸としたまちづくりの成功事例を見ることができる。貢献したいと願う仕事と環境、やりがいが各地にもたくさんあることを知った。
多くの子育て世代にとっては、移住先の教育の質に対する不安が大きな懸案事項となっているであろう。その地域での教育のメリットを共有し、さらにICTを活用するなどにより、理想的な教育環境構築は不可能ではないだろう。
日本各地で、そこに住まう幸せを感じる人が増えることで、さらに地域の魅力が向上し、集中や過疎の是正が、各地固有の問題の解消を促し、より幸福感の高い未来につながっていくのではないだろうか。まずは私が、1歩を踏み出そうと思う。
(NPO・シニアマイスターネットワーク事務局 浅川りえ子)