観光庁をはじめ国内観光関係産業全体によるインバウンドの推進は大きな成果を生み、JNTOの推計値によると2019年についてもこれまで通り大幅な入国者の増加が見られた。しかし、四季が肌で感じられるといわれた国内の自然の状況を観(み)ると、地球温暖化の影響のためか季節ごとの節目が段々と不明確になり四季折々の魅力がいまひとつ肌で感じられなくなってきているようだ。
特に昨年の9月、10月には15号、19号とこれまでにはあまり見られなかったような大型・強大台風の上陸をはじめ不順な気候により、訪日観光客の一部にはキャンペーン等でうたってきた自然を含む日本の魅力を十分に感じられず帰国された方も多かったと思う。
気象庁では顕著な災害を起こしたさまざまな自然現象の名称(気象<台風を除く>、台風、地震、火山)の中の“台風”として、去る2月19日に上記二つの台風を“令和元年房総半島台風”“令和元年東日本台風”と名付けた。台風の命名は昭和52年9月(台風第9号)の沖永良部台風以来で42年半ぶりとのことである。
観光産業は平和の下でないと…といわれている。しかし、豊かで優しく厳しい大自然(人工構築物の都市も含む)の中でもという条件も必要不可欠と考える。その中で自分たちの置かれた環境、状況に柔軟に適応しつつ衣、食、住といった広範な観光行動を楽しんでもらうことこそが豊かな観光行動の証しではないか。
観光行動においては訪問地での居住空間としての宿泊産業は重要な役割を果たす。地震や台風、豪雨、豪雪といった日本の地理的要因は逆に自然の魅力をも数多く提供してくれている。それ故にそれらに対しては絶対的な安全対策が求められる。ホテル、旅館等宿泊施設では細心にわたる対策、準備と適切な判断がお客さま、従業員の安心感につながり、どのような状況においても大きな間違いにはつながらないことになる。
(NPO・シニアマイスターネットワーク副理事長 満野順一郎)