新型コロナの世界経済への影響は、過去の経済不況の回復パターンからは予測できないといわれている。
国のオリンピック関連支出は1兆600億に達し、公表予算の4倍と会計検査院は公表している。さらに東京都1兆4100億、組織委員会6千億、五輪関連投資額は、3兆を超えるようである。競技は17日間とパラリンピック計31日間のイベントであり、ポスト五輪の施設運用とランニングコストの負担能力が課題になっている。
政府のコロナ対策予算額は5兆円を超えるので、新規国債16・8兆の追加発行となると、不況の連鎖で財政再建どころの話ではなくなる。
観光関連産業の回復は、社会の経済基盤が回復してから半周遅れで稼働するのが従来パターンである。V字回復は限られた地域・企業であり、業界の編成が大きく変わることを想定すべきであろう。
しかし、観光関連産業は社会経済の高度化の中では、成長条件を備えている産業であり、時代のニーズを吸収できる優良産業分野であり、自信をもって挑戦していただきたい。
政府は令和五輪をもって、観光産業を経済成長の柱と位置付けるが、国内需要の伸び悩みと、高齢化・人口減少は、市場構造とともに経営環境の構造的変化を起こしていることは避け難い現実である。
宿泊産業界は、ポストコロナ&オリンピックを想定した中長期経営戦略の構築を求められるが、地域おこしレベルで解決できるとは思われない。
このような時期にこそ、業界団体は社会貢献の視点から持続的な地域発展に関与すべきであり、新しい経営環境に適応できるマネジメント能力の涵養(かんよう)と、人財の育成が求められていることを自覚したい。
過去の経験から自戒を込めて言えることは、市場経済は優勝劣敗原理の基で自らの生存領域を創る競争である。インバウンド依存に限界があることを知りながら、戦略的・戦術的な論拠のない追従投資が、ハゲタカの餌場になったことは学習済みである。
今こそ、宿泊業はマネジメント能力の向上=人財育成に投資することを考えたい。
企業経営の健全性確保は大前提であるが、そのためにはマネジメント能力開発と、それを担う関係者の将来展望を具現化する努力なくしては達成できない。
求められる「マネジメント能力」は、現状の課題解決力だけでなく、近未来将来と時系列な視点からの経営理念と業態改革に挑戦する意欲が求められている。ぜひとも挑戦していただきたい。
(NPO・シニアマイスターネットワーク理事長兼一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会理事長 作古貞義)