6月初旬までにコロナ倒産は227件で、業種別では「ホテル・旅館」が最多の40件、続いて「飲食店」である。新型コロナによる需要喪失が引き金で、以前からの経営不振企業が立ち行かなくなった。新入社員の自宅待機や航空大手の採用中断、旅行会社の賞与支給停止、給与カットなど「観光」を取り巻く話題は暗いものが多い。
宿泊業界の見通しは、当面「マイクロツーリズム」で地元需要を喚起し、県境越えの移動可能後は「Go Toキャンペーン」で国内客を取り込んで生き残り、外国人は18カ月(4月から見て)先になるというのが大勢のようである。なぜならば、国内調査では「外食」に続き「国内旅行」のニーズが50%近くであり、方向性は間違っていないように思える。
しかし、それで本当に良いのであろうか?
発生源の中国はいち早く観光旅行を再開し、5月の労働節(5連休)では国内旅行者は1億1500万人、多くの死者を出したイタリア、スペインなど欧州各国も観光客の受け入れ再開を表明した。訪日客の4分の3近くを占める東アジアやオセアニアも感染からの回復は日本より早い。
複数の調査では、中国、台湾、香港で渡航解禁後の海外旅行希望先で日本が一番となっており、別の調査でも年内に訪日希望の中国人は6割を、台湾人は4割を超えている。
白馬村では、豪州の渡航制限がクリスマス休暇に解除との見通しを発表して以降、豪州人の年内予約が入り始めたそうだ。
ニュージーランドや欧米豪では、バケーションレンタル(1棟貸し民泊)の予約が急増している。
世界中で「ニューノーマル」が基準となりつつあるが、日本には、「安心」「安全」「清潔」という世界に誇れる卓越した特徴がある。旅行者には、3密を避けることができるのかに加え、この卓越性が非常に重要な要素になってくる。
マッキンゼーの調査では、死者の少ない日本があまりにも悲観的で観光復活に後れを取るのでは、との懸念も出ている(セントラルフロリダ大・原准教授)。
世界の回復スピードに追いつき、早々に観光復興に向けてかじを切らなければ、旅行者の多くを他国に奪われることになる。日本復興のためにポジティブにいかなければ!
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 文教大学国際学部特任教授 黒沢直樹)