COVID―19発生を境に宿泊産業を取り巻く環境が一変した。
国や金融機関からの支援を受け、耐え続けている施設も多いが、この期間を利用して、今後を見据えたマネジメントへメンテナンスすることが大切である。
はじめに、SWOT分析などを活用し、自社のポジションや市場環境への対応を確認することから始めたい。好況期には考えなくてもよかったかもしれないが、顧客から選ばれる要素を整理し、市場環境の変化に伴い、アジャストが必要な要素について確認をしていただきたい。
次に、ターゲットに定める顧客へ提供する価値が今まで通りでよいかを検証したい。顧客との接点に提供するサービスが顧客満足評価につながる要素であったが、COVID―19の経験を経てからは「3密回避」「非接触」が重要な要素になっている。「安心・安全」を基に、顧客へ提供する価値にも変化が生じている。
マネジメントとして、注意しなければならないことは、「効率的」な改善と「効果的」な改善の使い分けである。
管理部門やセールス&マーケティング部門には、IT/デジタル技術や柔軟な働き方(リモートワーク等)を活用した業務効率の改善を追求してもらいたい。業務のアウトソーシングや、クラスター組織による複数施設の共同マネジメントを実践することが「効率的」な一つの例である。
一方、顧客と接する現場オペレーションでは、効率を重視したオペレーションになると、顧客満足度への影響が懸念されるため慎重な検討が必要である。お勧めしたい例として、カスタマージャーニーを図式化し、顧客満足に効果的なタッチポイントを検証する手法がある。滞在する顧客のニーズが満たされるポイントを具現化し、顧客満足に効果的な仕掛けや提供価値を導入し、不要なものは効率化させていくことで改善を図るものである。今までの固定観念に固執せず、新たな発想を取り入れることで、従業員のモチベーションにも寄与し、「効果的」なマネジメントの改善につながると考える。
各社において創意工夫が試されるが、この難局を乗り越えて、効果的なマネジメント事例が、いくつも生まれることを期待したい。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 岩佐寛之)