コロナウイルスが観光産業に与えた影響の一つに人手不足が挙げられる。
4年ぶりに行動制限がない今夏、人流の増加やインバウンドやレジャー需要の活発化を背景に、国内景気は上昇傾向で推移している。特に、インバウンド需要は今後さらに拡大する傾向にある。それに伴い、観光産業における人材の確保・定着は不可欠であり、喫緊の課題ともいえる。
帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2023年7月)によると、「旅館・ホテル」は「情報サービス」に続き、約7割超の企業が人手不足と感じている。
コロナ禍において営業時間の短縮や休業、雇用の調整を余儀なくされ、従業員数が戻り切らない状態で需要が大きく回復し、人手不足が急激に高まった状況が今なお続いている。
デジタル技術の進化に伴い、業務の効率化を目的としたシステム設備投資も増えているものの、業界全体としては高まる需要に追いつかない。今後も人手不足割合の上昇も予想され、それは労働者の雇用環境への負荷などへの影響が想定される。
若者の観光産業に対する意識も変化している。
国内外への旅行制限、隔離措置、健康への懸念で旅行意欲に大きな影響を与えたことのみならず、社会情勢の影響、景気により大きく左右される業界であることを印象付けた。
マイナビ 2024年卒 大学生業界イメージ調査によると、「ホテル・旅行業界」において労働環境や待遇などの雇用面や、外的影響を受けやすいことにより企業活動の安定性に不安を覚えマイナスイメージを抱いているコメントがある。
人手不足解消への鍵のひとつとして、未来を担う次世代人材に注目したい。
若者には、「旅行」を通して自己発見と成長の機会を多く持つことを望む。そして「ヒト」との出会いを重ねて観光産業が経済的、文化的、社会的に大きな価値を持つ、いわば平和産業であることを体感し、人々を笑顔にし世界を幸せにする「チカラ」がある魅力を知ってほしい。その先に、持続可能な産業の発展があるのではなかろうか。
(駒沢女子大学観光文化学類非常勤講師 佐藤奈緒子)