第4次観光立国基本計画において最重要戦略としている持続可能観光地域づくり推進の目的は、地域住民の豊かさ・幸福度向上であり、観光から得られた収益によりその地域の観光資源を保護・活用し、持続可能なものとしていくというUNWTOが推進するVisitor(観光者)、Industry(産業)、Community(地域)、Environment(環境)の四方よしのVICEモデル実現を目指すものであると認識される。
日本の幸福度ランキングは世界47位(2023年)であり、シンガポール(25位)、台湾(27位)に追い越され、長期的にも下降傾向にある。この幸福度とデジタル化、SDGs達成度には一般的に相関性が強く、北欧4カ国がこのいずれにおいても上位を占めている。人口減少が急速に進む日本においては、特にこのデジタルを活用した業務変革(DX)の推進が緊喫の課題であると認識される。コロナ禍により露呈した旅行業、宿泊業の経営変革の遅れという課題においても迅速なデジタル化の取り組みが強く求められている。
また人口減少に伴う地方における交通利便性低下は深刻であり、観光への影響が懸念されており、住んでよし、訪れてよしの実現のためにも、デジタル化による大きな交通の仕組みの改革が不可欠であると認識される。
具体的には顧客ニーズに対応した複数の交通手段の予約から搭乗、決済までを一元的にアプリで管理するフィンランドのWhimに代表されるMaaSの全国展開、自動運転バス、路線バス縮小を補うオンデマンド交通、Uberに代表されるシェアリングエコノミーの活用が運転手不足に悩む地方における地方創生の有効策としてその早期実現が期待されている。
日本のデジタル競争力も世界29位(2023年)とシンガポール4位、韓国8位、香港9位、台湾11位に対し劣位にあり、スマートシティランキングも東京72位、大阪98位と大きく差をつけられている。
日本のこうした厳しい現実を直視し、海外先進事例を謙虚に学び、危機感を持ってDXを推進していくことが観光立国先進国になるために強く望まれている。
(帝京大学経済学部観光経営学科教授 山下晋一)