ドル、ユーロ、ポンド、元、ウォンと通貨単位が国ごとに異なることは周知の事実だろう。温度や重さ、長さなどの日常的な単位も国によって異なることがある。温度の単位で言えば、アメリカが諸外国と異なる単位を用いており、天気予報の画面には、最高気温80とか、90、110といった数字が並んでいる。
温度とは物体の温冷の度合いを数値で表したものである。科学的に言うと、物体の温冷は、物体を構成する分子や原子の運動エネルギーの平均値を反映しており、これを数値化したのが温度である。日本で用いる温度は、アンデルス・セルシウスが1742年に提唱したセルシウス温度であり、記号は℃である。一方、アメリカではガブリエル・ファーレンハイトが1724年に提唱したファーレンハイト温度(華氏温度)を使っており、記号は゜Fである。メートル法を用いる多くの国ではセルシウス温度を用いているが、アメリカではメートル法を使うことが法律で規定されていない。最近は単位変換アプリがあるので、旅行の際も困るほどではないが、慣れるまでは困惑するのは確かである。
逆の場合はどうだろう? アメリカでも学校ではメートル法を学ぶようだが、科学や工学の分野に携わるのでなければ、日常で使わない単位など忘れてしまうだろう。となれば、アメリカで育った人が日本に旅行に来て、天気予報で「最高気温は30度」と聞いても(たとえ、英語で30degrees Celsiusと聞いたとしても)、全くイメージできないだろう。同僚の英語の先生によると「そんな時はSiriに聞きます」ということだが…。
アメリカでは長さ・重さの単位も異なる。長さは、マイル、ヤード、フィート、重さはポンド、オンスである。イギリスもメートル法を用いているが、マイル、ヤード、ポンドも日常的に用いている。例えば、ホテルや旅館などのフロントの天気予報や観光地までの距離を示した案内図、和牛ステーキのメニューに、℃やkm、gに加えて、おおよその値でも、゜Fやmile、ozが併記されていたら、外国語に堪能でなくとも、ちょっとした国際化になるのではないだろうか?
(専修大学経営学部教授 佐藤暢)