【シニアマイスター経営の知恵 55】われ山に目をあげん 浅川りえ子


 花笑みの季節を迎え、あちらこちらで可憐な彩りが、やがて訪れる春を告げてくれる。北海道は、今なお粉雪がきらめく白銀の世界だが、こんもりと降り積もった雪の下では、養分をたっぷり蓄えたいきものが、力いっぱい芽吹く時を待っている。厳しい冬をいかに越えるかが、その年の実りを左右するのではないだろうか。

 まちづくりに携わり、目の前に与えられた機会に、夢中で取り組んでいても、ふとした瞬間に、違う道もあるのだなと迷いが生じることがある。だが、自分にとって、それがどれほど困難と思われることであっても、正しいと信じる道ならば、やはり進む勇気が必要ではないだろうか。その時に心を強くしてくれるのは、やはり人なのだと考える。なぜならば、人の善意によって、人は支えられ、励まされ、生かされており、感謝の気持ちを忘れなければ、どんなに苦しい時も、希望を見いだすことができるからだ。

 観光の持つ最大の魅力は、地域、年齢、職種、時代さえも越えた、人との交流を創出できる点にあるのではないだろうか。日常生活圏を離れ、その地域の文化や歴史に、ひと、もの、ことを通して、光を見ることができるからだ。

 また、地方創生の流れの中で、DMOが担う重要な役割として、稼ぐ力の向上だけでなく、「地域への誇りと愛着を醸成する」と明記されており、注目すべき点だ。「住んでよし」がなければ、「訪れてよし」にはならないことを、改めて強調している。住まう人が、それぞれ理想とするライフスタイルを実現することが、その地域の魅力となり、訪れる人を魅了するのではないだろうか。

 表題の一説は、「我が助けはいずこより来るべきぞ」と続く。清里開拓の父ポールラッシュ博士が、絶望の淵で八ヶ岳を仰ぎ、彼の心を支えた言葉として刻まれている。先人たちが示してくれた、地域の魅力である人が、一層輝く環境を整えることの重要性を忘れずに、与えられた環境で私も精一杯、芽吹いていきたい。

(NPO・シニアマイスターネットワーク北海道ブロック担当ディレクター 仁木町地域おこし協力隊、浅川りえ子)

 
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