【シニアマイスター経営の知恵 98】女性経営者の社会進出と女将 NPOシニアマイスターネットワーク理事長兼一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会理事長 作古貞義


 プレ・オリンピック競技の女性アスリートの活躍はめざましい。世界記録も男女性差を感じさせないが、日本の女性の社会進出のランクは、先進149カ国の中で110位と、著しく低いことが指摘されている。グローバル化の下で多様な価値観の存在する現代社会であるが、わが国では女性の社会・経済分野での活躍を支援する法整備は進んだが、いまだ社会に性差が存在している。

 宿泊産業の就労者の過半は、女性であるにも関わらずマネジメント職位で活躍する女性の数はいまだ少ない。昭和、平成、令和と社会環境は大きく変わり、企業経営者として活躍する人財も増えてはいるが、欧米からはかけ離れている。

 令和元年に、国家検定試験機関として、マネジメント能力育成に特化した団体、一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会が創設された。宿泊産業界の企業および就労者のマネジメント能力向上に資する検定活動を沖縄から北海道まで、全国区で開始している。全国の当会検定試験・検定委員(審査員)は現在200名で、なお増強中だが、女性検定委員の増加は目覚ましく心強い限りである。

 男女性差を乗り越え事業のリスクに挑戦する女性経営者が増えていることは社会の成熟を示す証左でもあるが、いまだに性差が話題になる社会から卒業できないことは残念である。他方、日経BPウーマン・オブ・ザ・イヤーの顕彰を20年も続けていることを評価したい。

 しかし、日本の宿・旅館は、女将という職能分野で伝統文化を継承する努力を続けている。女将は稼業・職業として歴史をもつ旅館業の経営者である。旅館の運営・サービス領域の統括管理者として、誇りをもって、旅人をもてなす職掌の統括管理者として、事業存続の歴史を作ってきたことの貢献・努力を評価したい。

 旅館の数だけ女将・女性管理職位者がいるとすれば、産業構造の中では極めて特徴的な業種と言える。3万9千軒=3万9千人の経営管理者が活躍していることになる。しかし、8万軒の旅館が今日では4万軒を切って減少を続けている。要因は、複合的な条件に左右されることは事実であるが、見事な経営を続けて企業を存続させている優秀企業は、全国各地に多数存在している。生存のロールモデルはいくつもある。

 経営とは変化対応業であり経営責任は経営者にある。企業は社会環境の変化に適応し、競争原理の中で存続・継承することに存在意義をもつが、市場・経営環境は、経験したことのないスピードで変化している。既存のノウハウ・経験の陳腐化を客観的に眺められるか、否か、課題の抽出、対策の構築と実施、当たり前のことである。自身の能力が問われている。

 令和2年・子年のスタートに当たり宿泊産業界の就労人口の過半を占める女性管理者=女将の活躍を祈念している。

 (NPO・シニアマイスターネットワーク理事長兼一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会理事長 作古貞義)

 
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