先日、東京ディズニーランド(TDL)近くに「変なホテル」が開業した。旅行会社HISがハウステンボス内に続いて開業させた2号店である。
チェックインは恐竜型ロボットが行い、ロボット掃除機ルンバが共用部を清掃し、AI(人口知能)ロボットがコンシェルジュの他、室内照明や空調を制御する等、100室のホテルで約170体のロボットが業務を行う。
客室清掃やレストランは業務委託しているものの、従業員はわずか7人で驚異的な生産性により開業早々、高収益を上げているという。
車の自動運転に代表されるように、AIの著しい進化によって私たちの生活や仕事に大きな変化が急速に起こりつつあるようだ。雇用が奪われる、あるいは賃金が下がると懸念する向きもあるが、果たしてそうであろうか?
日本経済新聞とフィナンシャル・タイムズの共同調査によると、2069業務の34%・710業務がロボットに置き換え可能とのことである。
ホテル・旅館と限定した職種はないが、該当する業務で見ると、調理27/37(37業務中27業務)・73%、皿洗い・その他調理26/36・72・2%、バーテンダー・ウェイター・ウェイトレス26/40・65%、ポーター・ベルボーイ・コンシェルジュ8/18・44・4%、セールス・営業14/35・40%、業務管理者(財務・購買・人事部長等)39/123・31・7%、経営者(CEO・支配人等)14/63・22・2%等とされている。
比率が低い業務は「判断力、コミュニケーション力、創造力、おもてなし力」が必要で、置き換えが難しいと分析している。高度な技術やスキルを必要とするホテル・旅館の現場にそのまま当てはまるとは思わないが、考えさせられる数値である。
観光産業は、基幹産業への成長を期待されているが、一方では、宿泊業は代表的低生産性産業に挙げられて久しい。自らの意識を大きく変えて、テクノロジーと共存し、「生産性」を高め、「おもてなし力」を向上させる時が来たのではないだろうか。
積極的に各種対策をとる施設も出てきてはいるが、労働力不足が深刻化している今こそ、置き換え可能な業務はテクノロジーに置き換え、最も大切な財産である従業員がお客さまへの対応に専念できる体制の構築を真剣に検討すべき時である。
「うちのやり方」に拘泥し、生産性の低さに目を瞑ることにピリオドを打つ時が来たのではないだろうか。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員 山梨学院大学 駒沢女子大学非常勤講師、黒沢直樹)