【シニアマイスター経営の知恵42】人出不足倒産と職業選択考 作古貞義


 日本の労働市場は、少子高齢化という構造的枠組みの中で収縮を続けている。宿泊・飲食業種の人手不足感調査(日本商工会議所)では80%を超える企業が「不足感あり」と答えている。他業種比較でも宿泊飲食系は、人手不足感が最上位にランクされているのは寂しい限りである。

 学生もアルバイト経験で就労環境の実態を知るので、3Kとは言わないまでも、志望職業としての優先順位は低い。優秀な人材が集まらない産業・業種・企業の将来はいかがなものか。職業人としての宿泊業の社会的認知度=ステータスは諸外国に比べると低い。

 宿泊・飲食業種は、深刻な労働力需給ギャップがあり、人手不足倒産も話題になるが、ブライダルで著名な某企業は、学生のエントリー数が国内大手有名企業をはるかに上回る人気である。

 若者からは、業績の安定感もあるが、おしゃれな企業イメージと就労条件が彼らのキャリアパス指向にマッチしていると評価されている。

 学生の回答は、(1)経営者の方針(2)企業イメージ(3)就労環境(4)経済条件(賃金)(5)キャリア作りにプラス―との回答が目立った。トップの決断次第で変えられるかと思うがどうか。

 以前、コラムでも触れたことがあるが宿泊業のステータスは高くはない。高めるのはマネジメントの責任でもあるが、業界団体もメディアもあまり話題にしないのは、自身の認識レベルなのだろうか。

 インバウンドも民泊問題も業界の主要課題ではあるが、自らの国家観、歴史観、企業観、職業観を見直してほしいと思うのはシニアのひがみであろうか。

 AI、IT、ICT、IoTなど、生産性を高めるデジタルテクノロジーへの関心は高いが、「役務型サービス品質」を売りとする業態では、単純なソフト導入が固定投資の上乗せとなり、逆に生産性向上の阻害要因にもなる。

 企業経営の成果は複合的に基づくので、単一の事象で原因特定は難しいが、まずはサービス産業の生産性、それも労働生産性の向上に挑戦することが、喫緊の課題である。温故知新、まずは自前で業態の見直しから始めたい。

 人生も、トライアル&エラーで日々を刻む、経営のミスマッチ・初期故障は当たり前のこと、として挑戦したい。

 NPO・シニアマイスターネットワークは無料経営相談を活動方針としています。お気軽に声をかけてください。

(NPO・シニアマイスターネットワーク理事長 流通科学大学名誉教授、作古貞義)

 
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